ロケットベンチャーのインターステラテクノロジズは2021年7月、観測ロケット「MOMO」の打ち上げを約1年ぶりに実施した。7月3日の7号機、同月31日の6号機と2機連続での打ち上げ成功という成果は、同社にとって乾坤一擲の賭けともいえる機体の全面改良という決断によるところが大きい。
インターステラテクノロジズ(IST)は2021年7月、観測ロケット「MOMO」の打ち上げを約1年ぶりに実施し、これに成功した。MOMOの打ち上げ成功は、2019年5月の3号機以来、じつに2年ぶり。同社にとっては、予想外の大きな足踏みとなってしまったが、今回、1カ月間で2機の打ち上げを連続成功させたことで、最高の再スタートを切ったといえる。
歓喜に沸いた3号機での打ち上げ成功から、MOMOに何があったのか。本稿では、この2年間の経緯を振り返りつつ、今回の成功の意味や、今後の展望などについて見ていきたいと思う。なお3号機までのことについては、既に記事を掲載しているので、そちらも参照してもらえれば、より理解しやすいだろう。
まずは、これまでのMOMOについて、ざっと振り返ってみよう。今回の2機も含め、打ち上げ結果をまとめたのが以下の表1だ。
2回の失敗のあと、3号機で初めて成功したのは、過去記事にまとめた通りだ。しかしここから、4号機は通信関連、5号機はノズルと、異なる場所に問題が発生し、2機連続で失敗。続いて7号機もすぐに打ち上げようとしたものの、今度はエンジンの点火器に問題が発生し、2回に渡り延期を余儀なくされた。
これまでも、失敗のたびにその原因となった部分を改良してきており、今後もそれを繰り返すことで、MOMOの信頼度を上げていくという方法はあり得ただろう。しかし、同社はその選択肢を採用しなかった。MOMOの運用をいったんストップしてでも、機体を全面改良することを選んだのだ。
それを決めたのは、ロケットの基幹部品といえるエンジンの大幅改良が必要になったからだ。ロケットにおいて、エンジンは重量的にもサイズ的にもコスト的にも、かなりの部分を占める。機体全体に影響を及ぼすため、必然的にメジャーアップデートになるしかなく、どうせならこのタイミングで他の部分も刷新しよう、というわけだ。
全面改良で狙ったのは、信頼性と運用性の向上。ロケットにおいて、まず信頼性が重要であることは言うまでもない。失敗が多いロケットなど、誰も使ってくれないからだ。100%は難しいにしても、最低でも90%程度の成功率は目指す必要があるだろう。また従来のMOMOは、機体の不具合による延期の多さも目立っていた。これも改善しなければならない。
そして今後を見据えた上で欠かせないのが高い運用性だ。これまでMOMOを運用してきて、さまざまな課題が見えてきていた。例えば、何か部品を交換する必要があるときに、他の部品もいろいろ外す必要があるなど、そういう使いづらさがあった。高頻度に打ち上げていくには、現場でもっと簡単に扱えるロケットにする必要がある。
しかも、これらの対策の結果、ロケットが高コストになってしまっては意味がない。あくまでもMOMOの「低価格で量産可能」というコンセプトは維持する必要があり、これが最も難しいことかもしれない。
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