レゾナックの最注力は半導体の後工程材料、6G向け半導体の新材料も開発製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2023年01月18日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]
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「共創」を実現するために3つの仕組みを用意

 複数の企業や大学、研究機関などと連携しソリューションを生み出す「共創」を実現するために3つの仕組みを用意している。1つ目は2022年5月31日に横浜市神奈川区で新設したオープンイノベーション拠点「共創の舞台」である。共創の舞台は、交通利便性に優れる横浜市内に位置し、オープン設計のオフィスと地域住民も使えるラウンジも備えている他、社員に助言を行うメンターも常駐している。計算科学や材料解析などに精通した開発メンバーの大半が2023年中に入居し、2024年に全面オープンする見込みだ。

「共創の舞台」の概要[クリックで拡大] 提供:レゾナック

 この施設では、長期のR&Dとして、次世代高速通信材料の開発とプラスチックケミカルリサイクル技術の確立を行う。次世代高速通信材料の開発では、さまざまなベンチャー企業や大学と協業して、次世代通信規格「6G」向け半導体の新材料を開発するプロジェクトを2023年1月に立ち上げた。今回のプロジェクトではテラヘルツ帯を活用した高周波対応材料の開発を目指す。

 具体的には、6Gの通信速度が5Gの100倍となり、伝送損失を大幅に削減する新しい半導体材料が求められていることを踏まえて、複合材料の樹脂やフィラー向けセラミックス、界面制御技術などを対象に、素材合成の段階からゼロベースで開発に取り組む。材料の組み合わせは分子設計の段階からシミュレーションとAI(人工知能)を活用して検証する。これにより、従来は算出できなかった化学構造式を短期間で導き出せるようになる。例えば、人手のみで行う実験では、1つの素材の組み合わせの検証で3カ月かかったが、AIを使用すると1日で1つの組み合わせが計算可能となり、3カ月あれば90種類の組み合わせを検証できる。

レゾナック 執行役員 最高技術責任者(CTO)の福島正人氏

 こういった開発を後押しするのは、計算化学、材料解析、量産化のための製造プロセス技術、設備管理、化学品安全管理と評価の専門技能を持つ、共創の舞台に集められた開発メンバーだ。一例を挙げると、共創の舞台内にある「計算情報科学研究センター」には、石油化学や触媒の分子設計レベルの開発に携わり、シミュレーションやAI、MI(マテリアルズインフォマティクス)に精通した70人のスペシャリストが在籍し、その多くが半導体材料の開発にシフトして、6G向け半導体の新材料開発などをサポートしている。生産プロセスの検討段階では量産化技術に詳しい社員が支援する。

 レゾナック 執行役員 最高技術責任者(CTO)の福島正人氏は、「2030年からの商用サービス開始が想定される6G向け半導体の新材料を開発するプロジェクトでは、今後4〜5年以内に一定の成果を上げたい。開発中に、6G向け半導体の材料に求められるニーズが変わることも見越して、開発期間の延長も視野に入れている」と述べた。

 プラスチックケミカルリサイクル技術の確立では、廃プラスチックをエチレンなどの基礎化学原料に転換する先端技術を開発する。高橋氏は、「2050年にカーボンニュートラルを実現するためにプラスチックの原料を石油由来ではないものにしなければならない。これを実現するために、当社は、プラスチックの原料となる化学品を使用済みのプラスチックから作る方法を探っている。この取り組みは、マイクロ波化学と協業で進めており、2022〜2023年の基礎研究で、使用済みのプラスチックから80%のプラスチック原料を回収する技術の確立にめどが立った。2023年は計算科学を活用し当該技術の実用化を推進する。加えて、廃プラスチックを回収する仕組みを構築するために、幅広いステークホルダーとの対話や共創も行う」と話す。

 2つ目の共創の仕組みは、2021年7月に、2021年7月に栃木県小山市の小山事業所内に設立した「パワーモジュールインテグレーションセンター(PMiC)」だ。PMiCでは、同社の「焼結銅ペースト」「熱伝導シート」「耐熱封止樹脂」「SiCエピウエハー」「セラミックス放熱フィラー」「冷却器」「耐熱コート剤」「樹脂ウォータジャケット」といった幅広い材料を使用して、パワーモジュールを試作し、顧客メーカーの設定条件に近い条件で評価して、その結果を材料開発にフィードバックし、適切な材料提案をスピーディーに行う体制を構築した。2023年からは、こういった試作、評価、検証機能を顧客にも共有し、共創を行うことで、顧客が素材開発も含めて技術革新ができるようにサポートする。顧客が求める機能に応じた最適材料を組み合わせ、同社が評価し短期間で提案することで、パワーモジュールの開発期間短縮にも貢献する見通しだ。こういった取り組みにより、2022年には顧客側の試作評価回数を従来の2分の1に減らせたケースもある。

「パワーモジュールインテグレーションセンター」の取り組みのイメージ[クリックで拡大] 提供:レゾナック

 なお、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)などxEV(電動車)の世界的販売拡大を受けて、パワーモジュール市場は、2030年に2021年と比較して3.9倍になる見込みだ。特に需要拡大が予想される高効率のパワー半導体であるSiC(シリコンカーバイド)ベースのパワーモジュールに関して、レゾナックは基板材料の「SiCエピウエハー」の世界シェアが25%である他、焼結銅ペーストや熱伝導シート、耐熱封止樹脂などのパワーモジュール関連材料を保有するなど、多くの強みを持つ。加えて、パワーモジュールの評価/検証を積み重ねてきた知見を生かすとともに、自動車関連デバイスメーカーでパワーモジュールを開発した経験があるエンジニアを採用し、体制を強化している。

 3つ目は、川崎市幸区に2019年に設立したオープン開発拠点「パッケージングソリューションセンタ」である。パッケージングソリューションセンタでは、世界的半導体メーカーとの交流を行うだけでなく、後工程の課題解消を進めている。施設内には、半導体製造ラインを再現し、製造過程における不具合の追求や評価、シミュレーションも実施している。

「パッケージングソリューションセンタ」の外観 提供:レゾナック

 また、半導体装置や材料、基板メーカーで構成される共創コンソーシアム「Joint2」を主導し、半導体の次世代実装技術の開発を後押ししている。

 一方、人材育成にも力を入れている。一例を挙げると、高橋氏が同社の70拠点を巡り、61回のタウンホールミーティングと110回のラウンドテーブルを実施し、理念を伝え、社員に成長を促した。高橋氏が直接会話した社員は1100人に達するという。

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