以上のように、全品目での設計者CAEの展開を進め、着実に成果へとつなげているカシオだが、設計者CAEを推進していく上で特に重要なことは「とにかく設計者の皆さんから必要だと思ってもらえることだ」(遠藤氏)という。
特にベテランの設計者の場合は、実機試験で得られた知見や経験、過去の成功体験に基づき設計品質を高めてきたという自負があるため、CAEツール活用による結果や効果をきちんと示し、理解を得ながら利用を促進していく必要があるという。「当社では幸い当初から理解を得られていたが、ベテラン設計者の意見や疑問点などをないがしろにしてしまうと、『学ぶ気はないから若い人たちで勝手にやってくれ』となってしまい統率が取れず、設計室全体での推進が危ぶまれてしまう。そうした事態を避けるためにも理解を得る、必要性を理解してもらうことが何よりも重要だ」(遠藤氏)。
ベテラン設計者に対して、若手設計者の場合は、学生時代にCAEツールに触れてきた人材もいるため、比較的理解を得やすい傾向にある。また、自身の設計案をレビューしてもらう際などにCAEの結果を示すことで、設計の確からしさを説明/共有できるといったメリットがあるため、日々の業務に必要なツールとして受け入れてもらいやすいという。
「近年は、実機を製作して試験できる回数も限られているので、かつてのように実機試験を何度も行って、そこから経験を得る機会が少ない。だが、コンピュータ上のCAEであれば、いろいろな設計パターンに対してシミュレーションをかけられるので、そこから最適なものに近づけていく過程の中で多くの学びがあり、それが設計者の糧になる。そういう意味でも、解析専任者に解析してもらってOK/NGを出してもらうのではなく、設計者自身がCAEを駆使してどこにOKとNGの違いがあるのかなど試行錯誤して勉強しながら進めていくことに意味がある。そうしなければ、次の設計に何も生きてこない」と遠藤氏は語る。
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