こうしたデジタル基盤との連携が求められる規制として今注目されているのが、欧州バッテリー規制である。EU理事会とEU議会で2022年12月に合意し、2023年の施行が見込まれている。2024年から順次、各種義務が適用される予定だ。
この規制では、廃棄された携帯型バッテリーの回収率や、原材料別の再資源化率、リサイクル済み原材料の最低使用割合などの数値が決められた他、「バッテリーパスポート(Battery Passport)」と名付けられたデジタル基盤で、バッテリーの性能や耐久性、カーボンフットプリント情報などのバリューチェーン情報へのアクセスを確保する必要がある。対象は、産業用および電動自転車/スクーター用バッテリー、電気自動車(EV)用バッテリーで、具体的にどのような情報をどのような形で記録し、共有していくのかについては、これから具体的な話が進む予定だ。ただ、具体的に規制内容が明確化すれば、欧州への取引では、QRコードにより、全てのバッテリーサプライチェーンの情報が見られる環境が構築されることになる。これに対応できなければ、ビジネスに入れないということになるのだ。
こうした動きを見ていると、製品バリューチェーンに関わるさまざまな情報をデータ化し、それを自動で収集し、共有できる仕組みを整えておくことは、将来的にビジネスを成長させる上で参加要件となりつつある。逆に、こうした体制を整えないことがリスクとなってきているのだ。そしてバッテリーパスポートを見ても分かる通り、これは既に具体的に動き始めていることだということが重要なポイントだ。
デジタル基盤によりバリューチェーンのデータが結ばれていくことで、世界が目指すのは「誰が見ても透明で健全なビジネス」だ。日本の製造業が製品について「健全で安心な品質」を築いていることは疑う余地はないが、それを「誰が見ても明らかな形で示せているか」というとそうとはいえない。今後デジタル基盤ベースで透明性を持ったビジネスを要求されることを考えると、2023年はこうした対応に本格的に力を入れなければならない年になるだろう。
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