2022年も大きな注目を集めた製造業DXだが、DXによるデジタル技術を基盤とした“信頼できるデータ”によるビジネスの枠組み作りが進もうとしている。2023年はその枠組みから外れた企業がビジネスに参加する権利を失う場面が生まれる可能性も出てくる。
2022年も大きな注目を集めた製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)だが、これらのデジタル技術を基盤とした“信頼できるデータ”によるビジネスの枠組み作りが進もうとしている。2023年はその枠組みから外れた企業がビジネスへの参加券を失う場面が出てくるかもしれない。
製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されてから既に何年かが経過している。製造業においては、特にドイツで2011年にインダストリー4.0が発表され、IoT(モノのインターネット)を活用したスマートファクトリーへの動きが注目されたことから、これらが本格化してきた2015年頃から主に製造領域での取り組みが先行して進んできた。
工場など従来人手による運用が中心となってきた領域でのデジタル化やデータ化が進み、これらのデータを活用するデジタル基盤の整備が進んできた。また、各種分断されてきたシステムやそれらが持つデータを相互運用できるような仕組みの構築などが進んでいる。MONOistの読者調査でも「つながる工場」についての取り組みを進めているとした回答は61%を占め、多くの企業でスマートファクトリー化が進んでいることが伺える。
日本におけるDXはここまでのところ、スマートファクトリー化の動きも含み、「デジタル化による既存業務の効率化」にとどまっているケースが多いのが現実だ。DXは「トランスフォーメーション」という言葉が入っていることもあり、デジタルを土台として、ビジネスモデルの変革などが進むことが本来目指すべきところだとされている。しかし、多くの製造業において、社内のさまざまな仕組みをデジタルベースに切り替えつつも、この成果を新たなビジネスに生かせない状況が生まれている。そのため、一部の製造業ではまだ「取り組む必要がない」と考える企業が一定層残っている。
ただ、今後はこのようなDX推進の停滞が許されないような状況も生まれてくるかもしれない。DXの出口としての新たなビジネス創出がそれほど進まない一方で、粛々と欧州などを中心に進んでいるのが、デジタル技術を基盤とした複数企業間のデータ流通を可能としたデータプラットフォーム作りだ。特に製造業ではサプライチェーンが複雑に絡み合う中で、データ共有基盤への接続がビジネス要件となる可能性が生まれているからだ。
例えば、欧州が自国や地域のデータ主権の保護を目的に構想を進めているデータ流通基盤「GAIA-X」など、既に具体的なシステムの構築や仲間づくりなどが進んでいる。現在はまだこうした仕組み作りが進み、徐々にリリースが始まるという段階だが、いずれはこうした基盤に“安全に”つながり、“保証された”データを提供していくことが、取引条件となってくる可能性が指摘されている。その際に、社内でDXを進め、データが人手のより改ざんできないような“保証された形”で提供できる体制になっていなければ、そもそものビジネスに参加できない危険性が生まれてくる。
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