未経験者でもトマトの収量が倍増、ローカル5G遠隔農作業支援の実力スマートアグリ(2/2 ページ)

» 2022年12月21日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
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「HoloLens 2」を使って生育調査、ハウス内でのドローン活用も

 スマートグラスを用いた取り組みでは、マイクロソフトの「HoloLens 2」による生育調査におけるデジタルデータの収集を紹介した。従来、作物の生育データを取得する生育調査はメジャーなどを使って手作業で茎長や葉長を測ってメモ帳に記入し、Excelにデータを打ち込むというのが一般的だった。これに対して、計測したい箇所の両端を指でポイントして自動計測するHoloLens 2のアプリを活用することで、自動集計とデータ送信、クラウドへの自動保存などが可能になる。実際に、これまで8株分の生育調査に50分かかっていたが、スマートグラスの活用で36分に短縮できた。今後は蓄積したデータをAIで解析して、遠隔支援によるスマート農業をさらに進化させられる可能性がある。

「HoloLens 2」を用いた生育調査の効果 「HoloLens 2」を用いた生育調査の効果[クリックで拡大] 出所:NTT東日本
実際に指を使って計測する様子 実際に指を使って計測する様子[クリックで拡大]
蓄積データの利活用の可能性 蓄積データの利活用の可能性[クリックで拡大]

 現在、新たに進めている取り組みとしてはハウス内でのドローン活用がある。ドローンを使えば、定点設置の4Kカメラやスマートグラス、走行型カメラではカバーしきれない生育状況の把握が可能になる。しかし、空間が狭く鉄骨などの障害物が多いハウス内でドローンを飛行させるのは難しい。そこで現在は、機体の上方と下方にそれぞれ搭載する3つのカメラと前方カメラ、合計7つのカメラで全方位認識が可能なSkydioのドローンを用いた自律飛行と、ローカル5Gを介した遠隔地からのドローン操作という2つのアプローチを検討している。

ハウス内におけるドローン活用の2つのアプローチ ハウス内におけるドローン活用の2つのアプローチ[クリックで拡大] 出所:NTT東日本

 Skydioのドローンについては、現時点では障害物との離隔距離は87cmになっているが今後は28cmまで近づけ、より詳細な生育状況の映像データ取得や狭い栽培レーンでの飛行などを可能にしたい考え。ローカル5Gを介した遠隔操作は、現時点では離陸とホバリング状態での旋回しか行えないため、安定した飛行や空撮などを実現していく方針である。

自律飛行するSkydioのドローンローカル5Gを介して遠隔操作中のドローン 自律飛行するSkydioのドローン(左)とローカル5Gを介して遠隔操作中のドローン(右)[クリックで拡大]

 なお、2023年度の実用化に向けては「選択肢を広げる」「導入しやすい工夫」「地域との協働」を挙げている。例えば、「選択肢を広げる」ではローカル5GにこだわらずWi-Fiでどこまでやれるかの検証を進める他、「導入しやすい工夫」では導入コストとして初期費用や月額費用とせずに、成果連動型のビジネスモデルを模索する方針を示している。

普及と実装に向けた取り組み 普及と実装に向けた取り組み[クリックで拡大] 出所:NTT東日本

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