デジタルツインを実現するCAEの真価

設計者CAEを活用した構造解析はじめの一歩デジタルエンジニアの重要性と育成のコツ(5)(2/4 ページ)

» 2022年11月21日 08時00分 公開

(1)プリプロセッサ(前処理)

 3D CADなどで作成した3Dモデルを用意し、材料物性値を定義します。主に「ヤング率」「ポアソン比」「降伏応力」「密度」「線膨張係数」などの値が重要になります。次に、3D CADと連携したCAEソフトの場合の多くは、拘束や荷重などの境界条件を設定し、「要素分割(メッシュ生成)」を行います。

 要素分割は、解析をするために必要かつ重要な作業です。構造解析は、数値解析手法として「有限要素法」が主に用いられます。有限要素法は、英語で“Finite Element Method”といい、頭文字を取って「FEM」とも呼ばれ、構造物を小さな領域(有限要素)に分割し数値解析する方法です。

 そして、有限要素の集合体のことを「メッシュ」と呼び、要素分割することを「メッシュを切る」と呼んだりもします。要素の種類として代表的なものに、「バー要素(梁(はり)要素)」「シェル要素(板要素)」「ソリッド要素(立体要素)」があります(図4)。シェル要素には三角形と四角形、ソリッド要素には四面体と六面体などがあり、CAEソフトによって設定できるものが異なります。メッシュ(要素)の品質が悪いと、良い解析結果が得られません。メッシュの品質として、要素の縦と横の長さの比(アスペクト比)が“1:1〜1:2”が良いとされ、正三角形や正方形に近いメッシュ形状が理想です。

要素の種類 図4 要素の種類[クリックで拡大]

 メッシュサイズは、ユーザーが設定でき、小さいサイズほど解析精度は向上しますが、正しい応力値が求められない「特異点」という問題が起きることがあり、ピン角や拘束箇所、不連続な形状、荷重となる場所などで起こりやすいので注意が必要です。対処法としては、特異点の近傍の応力は無視して、少し離れた位置の結果を評価します。また、角部に小さなフィレットを付けると解消されます。

 要素の頂点を「節点」と呼び、自由度を持っています。3D空間の中では、X/Y/Z軸の並進3成分、回転3成分があるため、1つの節点当たり最大6つの自由度を持っています。この自由度を固定するか/固定しないかを調節することによって、“構造物がボルトや溶接などで固定されている”などのさまざまな拘束の状態を再現します。

 きちんと自由度を固定していないと、重力や摩擦のない世界に構造物がある状態になってしまい、力を加えても何の変形もなく、無限に移動する「剛体移動」を起こしてしまうので、拘束定義する際には注意が必要です。また、複数の部品が組み付いたアセンブリの解析を行う場合には、接触の定義として、接着やスライド、摩擦などを設定しますが、うまく設定されていないと、部品が意図しない方向に移動してしまうことがあります。

 要素には、頂点のみに節点がある「1次要素」、要素の辺上に中間節点がある「2次要素」があります。2次要素は節点数が増えるため、解析時間が長くなってしまうデメリットがありますが、部品の曲面部分をより正確に近似でき、解析精度が向上します。

 線形静解析をするためには拘束するだけではなく、荷重や変位を与えて構造物に“何らかの変化”を起こさなければ解析できません。CAEソフトによって荷重の種類はさまざまありますが、「力荷重」「圧力荷重」「温度荷重」などがあり、荷重をかける位置や方向を適切に設定します。なお、荷重も拘束と同様に要素の節点に対して定義します。

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