目でも楽しめる奥山清行デザインの次世代オルゴール、日本電産サンキョーが発売デザインの力

日本電産サンキョーは2022年11月10日の「いい音・オルゴールの日」に、世界的工業デザイナーである奥山清行(KEN OKUYAMA)氏とのコラボレーションによって実現した、次世代オルゴール「オルフェウス KANATA」を発表。これに併せ、KEN OKUYAMA DESIGN 東京事務所(東京都渋谷区)でトークセッションを行った。

» 2022年11月11日 06時30分 公開
[八木沢篤MONOist]

 日本電産サンキョーは2022年11月10日の「いい音・オルゴールの日」に、世界的工業デザイナーである奥山清行(KEN OKUYAMA)氏とのコラボレーションによって実現した、次世代オルゴール「オルフェウス KANATA」を発表した。これに併せ、KEN OKUYAMA DESIGN 東京事務所(東京都渋谷区)でトークセッションを行った。

写真左よりKEN OKUYAMA DESIGN 代表/工業デザイナーの奥山清行氏、日本電産サンキョー 代表取締役社長執行役員の大塚俊之氏 写真左よりKEN OKUYAMA DESIGN 代表/工業デザイナーの奥山清行氏、日本電産サンキョー 代表取締役社長執行役員の大塚俊之氏[クリックで拡大]

 同製品は、コロナ禍を経て高まりを見せる癒やしのニーズやアナログ回帰トレンド、ネオレトロブームなどを背景に、縮小傾向にあるオルゴール市場を再活性化するための戦略商品として位置付けられた次世代オルゴールだ。「次の世代にオルゴールを残していく、伝えていくための新製品として開発した。オルゴールの製造を手掛けて76年、われわれにはその義務があると思っている。これからの時代、家庭の中、社会の中でオルゴールがどのような役割を果たしていくのかということを考えながら開発を進めてきた」と、日本電産サンキョー 代表取締役社長執行役員の大塚俊之氏は新製品開発に至った経緯を説明する。

 1946年創業の日本電産サンキョーは、日本電産の子会社で、電子部品/システム機器の製造メーカーとして知られているが、創業事業はオルゴール製造である。同社は、国内で初めて国産オルゴールを制作し、現在に至るまで長年にわたりオルゴールの生産を続けてきた世界でも数少ないオルゴールメーカーでもある。

工業デザイナーの奥山清行氏とのコラボレーションによって実現した日本電産サンキョーの次世代オルゴール「オルフェウス KANATA」 工業デザイナーの奥山清行氏とのコラボレーションによって実現した日本電産サンキョーの次世代オルゴール「オルフェウス KANATA」[クリックで拡大]

 「オルフェウス」は同社が手掛ける、くし歯が30弁以上の最高級オルゴールブランドの名称で、ギリシャ神話に登場する吟遊詩人Orpheusに由来する。新製品であるオルフェウス KANATAは、くし歯が40弁あり、シリンダーやディスクが回転してくし歯をはじく従来のメカニズムに代わる新機構を採用する第3のオルゴール「スマート・ギア オルゴール」として製品化したもの。デジタルデータに記録した楽譜に応じてくし歯をはじく機構を導入することで、曲数や演奏時間に制約のあるオルゴールの弱点を克服している。付属のSDカードに記録された150曲の楽曲をフルコーラスで何時間でも演奏し続けることができる。

日本電産サンキョー 代表取締役社長執行役員の大塚俊之氏 日本電産サンキョー 代表取締役社長執行役員の大塚俊之氏

 世界的工業デザイナーである奥山氏とのコラボレーションの実現について、大塚氏は「社内のみの開発だと、どうしても『オルゴールとはこうあるべきだ』という固定概念に縛られてしまう。そこから脱却するためにも外部の力を借りる必要があると考えた。多くの歴史的なプロダクトを手掛けてきた実績から、これまで関心のなかった人たちに対してオルゴールの魅力を伝えることができるデザインをしていただけるのは奥山先生しかいないということで指名させてもらった」と語る。

 一方、依頼を受けた奥山氏は「オルゴールの歴史は200年ほどあるといわれているが、実は根本の部分は昔からほとんど変わっておらず、オルゴールについて学ばせていただく中で、まだまだやれることがある、デジタルとアナログを組み合わせて今までにないオルゴールを作れるのではないかと感じた。また、オルゴールから聞こえてくる音は生の演奏であるため、『楽器』だといえる。そこに大きな可能性を感じた」と述べる。

KEN OKUYAMA DESIGN 代表/工業デザイナーの奥山清行氏 KEN OKUYAMA DESIGN 代表/工業デザイナーの奥山清行氏

 実際、従来のオルゴールとは一線を画す筒状のデザインが目を引く。オルフェウス KANATAは、精緻な内部機構が動く様子を“目で楽しめる”よう、LED照明を内蔵したスケルトンボディーを採用。さらに、フレームやダイヤル部などに金属パーツ(アルミ、真ちゅう、鉄など)を用いることで、重厚さと高い質感を引き出している。

 デザインのポイントについて、奥山氏は「オルゴールの内部には、隠すにはもったいない非常に美しい構成部品があることが分かった。これを見てもらいたいと感じた。もちろん、そのままでは見せられないものもあるため、しっかりと整理し、そしてさらに美しくして見ていただくことで、今までにないオルゴールの形態が作れるのではないかと考えた」と説明する。

 また、最も重要な音づくりについては、各種パーツの素材を厳選するとともに、トラス構造を参考にした新たなフレーム構造なども取り入れ、さらにここに、同社の職人が仕上げる匠の加工技術(心臓部であるくし歯を職人が1つ1つ削り出して調整する)を融合することで、オルゴールならではの繊細かつ奥行きのある生演奏の音質を実現したという。オルフェウス KANATA単体での音質はもちろんのこと、成形合板技術で定評のある天童木工が製作した付属の専用共鳴台の上に置いて聞くことで音の深みや響きがより一層増幅される。

動画1 「オルフェウス KANATA」のデモ演奏の様子

 オルフェウス KANATAの本体サイズは約494×150×140mmで、重量が約7.5kg(ACアダプター込み)。本体右側に液晶ディスプレイが搭載されており、ダイヤルの回転やプッシュによって各種操作や機能の設定、曲目の選択などが可能だ。また、共鳴台のサイズは約525×394×280mmで、重量は約6.5kgとなっている。

液晶ディスプレイを搭載本体横に搭載されたダイヤルで各種操作が行える (左)演奏中の楽曲などを表示する液晶ディスプレイを搭載/(右)本体横に搭載されたダイヤルで各種操作が行える[クリックで拡大]

 販売価格は、オルゴール本体と専用共鳴台がセットで143万円(税込み)。日本電産サンキョーオルゴール記念館「すわのね」、日本橋高島屋 S.C.本館、大丸東京店、和光本店、Eye Eye ISUZU 本店の他、公式オンラインストアで販売する。

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