AutoCADユーザーの最新動向については、CADコンサルタントの井上竜夫氏が解説した。井上氏は、CADの使われ方や課題について触れるとともに、生産性向上に寄与するAutoCADの活用法について紹介。その中で、40年間進化し続けてきたAutoCADに対して、使う側も意識的に変化していかなければ、その恩恵を受けることができないと指摘する。
「シートセットやダイナミックブロックなど、2000年代にAutoCADに実装された機能をいまだに知らない、使えないというユーザーが非常に多い。いくらCADがバージョンアップしても、CADを使う側のルールや環境が旧来のままでは意味がなく、使い方をアップデートすることが大切だ。皆さんの意識が変わることがきっかけとなって、改善が始まる。AutoCADはユーザーの生産性向上のために、常に新しい機能を取り入れている。ぜひこうした新しい機能を、新しい使い方で、皆さんの環境にも取り入れてもらいたい」(井上氏)
さらに、2022年3月30日に販売開始した最新バージョン「AutoCAD 2023」の注目機能について、オートデスク 技術営業本部 建設ソリューションクラウドスペシャリストの大浦誠氏が紹介した。特に注目したいのが、先ほどの井上氏の指摘にあった“実装された機能を知らない/使えない”という問題を解決する糸口になり得る新機能だ。
AutoCAD 2023の新機能「自分のインサイト:マクロアドバイザ」では、機械学習アルゴリズムを活用したアドバイザリーエンジン「自分のインサイト」が、作業をより迅速に進められるよう厳選されたインサイトを設計者へ提案するとともに、「マクロアドバイザ」が繰り返しの多い作業を効率化する役立つマクロを提案してくれる。
「初めてAutoCADを使う人にコマンドを学んでもらう、AutoCADを使い慣れている人により便利な使い方や知らなかった使い方を提案する。そういったことを自分のインサイトで支援する。また、AutoCADはカスタマイズすることで生産性をより高めていくことができるが、手を出しにくい部分もある。そこで、マクロアドバイザがカスタマイズの1つであるマクロの活用を、ユーザーの使用状況に合わせて提案する」(大浦氏)
また、大浦氏は、現在英語版のみで提供されているAI(人工知能)ガイド付きアシスタント「Autodesk Assistant」について、将来的に日本語、ドイツ語にも対応予定であること、前述したAutoCAD Webの提供により、いつでもどこからでもAutoCADで図面にアクセスできることをあらためて紹介した。
最後に、AutoCADの今後の方向性について、伊藤氏は2022年9月27〜29日に米国ニューオリンズで開催されたグローバルカンファレンス「Autodesk University 2022」で発表のあった業界別クラウド(Fusion/Flow/Forma)と、それを支える「Autodesk Platform Services」を挙げ、「今後時間をかけて、既存の製品やサービスが、業界別クラウドを利用する機能を提供するようになったり、業界別クラウドを前提とした新しいツールやサービスが登場したりする可能性がある」(伊藤氏)と言及する。
一方で、Platform Servicesの前身である「Forge」は8年ほど前に投入されており、「国内においてもForgeを活用してプロセスやワークフローの自動化に取り組んでいる企業がある」(伊藤氏)とし、AutoCADによる作図プロセス自動化、Inventorとの接続による高度な情報活用を実現する丸栄コンクリート工業の取り組みを紹介した。
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