トルンプのグローバルの売上高は2021年6月期で約4500億円。日本は売上高全体の30%を占めるアジアの中で、中国に次ぐ大きな市場となっている。「日本はアジアの中で一番精密なもの、複雑なもの、少量多品種を作る市場で、売れる機械もミドルレンジからハイエンドが中心となっている。中国や米国とは求められるものが違う。より複雑なものを作るか、より単純なものを大量生産するかの2極化の流れが進んでいる」(高梨氏)。
2022年に発売した自動アーク溶接機「TruArc Weld 1000」の売れ行きは好調という。TruArc Weld 1000は溶接ロボットや発信機、集じんシステムなどがパッケージになった製品で、簡単なプログラミングで操作できるのが特徴だ。「置くだけで作業が始められる他社にはない製品で、労働環境を守る意味で集じんを気にされている方から好評いただいている」(高梨氏)。
コロナ禍で抑えられてきた投資が動き出しており、手応えを感じている一方でサプライチェーンの混乱が懸念事項だ。「受注はどの分野も好調だが、製品の納期が一番気になっている。ほぼ完成しているのに、あの部品がないから出荷できないという状況が2年程続いている」(高梨氏)。
ロシアとウクライナの戦争が始まり、直近では円安も進んでいる。「戦争勃発後、船や飛行機の便数が減っており、物流のコストが上がってきている。ヨーロッパに生産拠点を置くわれわれとしては大きな問題だ。為替も私がトルンプに入社した2020年は1ユーロ120円前後だったが今では1ユーロ約140円と、これだけ動くことはなかなかない。納期は通常で6カ月、今は1年近くかかるケースもあるが、価格面で顧客に直接影響がない形にしたい」(高梨氏)。
ブランドイメージの構築も課題に挙げる。業界内では知られたトルンプも、一般的に知られている企業とは言い難い。高梨氏は「いい人材に入社いただく機会にもなるが、われわれが想定していなかった企業からお声が掛かる新たな市場開拓にもなる。既存顧客の機械の入れ替えを待っていればいいというわけではない」と語る。
高梨氏は明治大学理工学部卒業後、日本シイベルヘグナー(現DKSHジャパン)では計測機器の国内販売を担当し、2004年からオリンパスで中国やタイ、オーストラリアで事業責任者などを経験。2020年にトルンプへ入社し、マシン事業部の事業部長に担当した。
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