“考える手”で協働ロボットに革新、近接覚センサー搭載ハンド展開の新会社設立:協働ロボット
大阪大学 基礎工学研究科 システム創成専攻 助教の小山佳祐氏は2022年8月12日、開発した「近接覚センサー」技術の産業利用を拡大するため、ベンチャー企業を立ち上げた。新たに立ち上げた「株式会社Thinker」を通じて、ソリューション提案や開発支援、プロダクト開発、販売などを行う。
大阪大学 基礎工学研究科 システム創成専攻 助教の小山佳祐氏は2022年8月12日、開発した「近接覚センサー」技術の産業利用を拡大するため、ベンチャー企業を立ち上げた。新たに立ち上げた「株式会社Thinker」を通じて、ソリューション提案や開発支援、プロダクト開発、販売などを行う。
近接覚センサーを搭載した協働ロボット。透明物質などの計測が可能[クリックで拡大] 出所:Thinker
小山氏が開発した「近接覚センサー」は、対象物との距離と傾きを同時に計測できる技術だ。これを活用することで、瞬時にモノの大きさや形状を把握できるだけでなく、ビジュアル情報としては捉えづらい死角部分や透明物質、鏡面の計測などが可能となる。Thinkerでは、まずはロボットハンドへの「近接覚センサー」の搭載を提案していく。独自のAI(人工知能)技術との組み合わせにより、バラ積みされていたり、形が不ぞろいだったりするモノを、ロボット自身が感知して、考えて、ピックアップできる協働ロボットの実現を目指す。
近接覚センサー[クリックで拡大] 出所:Thinker
Thinkerの代表取締役には、奈良女子大学 客員教授や大阪工業大学 客員教授を務める藤本弘道氏が就任している。藤本氏は、パナソニックの社内ベンチャー制度を利用してパワーアシストスーツのベンチャー企業ATOUNを創業(2022年4月に解散)。その後、2022年5月に「株式会社SHIN-JIGEN」を創業している。
近接覚センサーにより、動く対象物をセンシングし把持部が追従するデモの様子[クリックで動画再生]
≫「協働ロボット」のバックナンバー
- 事例で振り返る協働ロボットの使いどころ
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。第14回では、「使いどころを探すのに苦労する」という声の多い協働ロボットについて、実際の事例をベースに紹介します。
- 協働ロボットはコロナ禍の人作業を補う手段となり得るか
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による混乱は2021年も続きそうな兆しを見せている。製造現場でも人の密集や密閉空間による作業が制限される中、これらを回避するために人作業の一部を代替する用途で期待を集めているのが協働ロボットの活用だ。2021年はコロナ禍による働き方改革も含め、製造現場での協働ロボット活用がさらに加速する見込みだ。
- 協働ロボット普及のカギは「用途別パッケージ」、2020年は“第3の道”にも期待
人口減少が加速する中、製造現場でも人手不足が深刻化している。その中で期待を集めているのがロボットの活用だ。特に協働ロボットの普及により人と同一空間を活用し新たな用途開拓が進んでいる。2020年はこれらの技術進化による普及が本格的に進む一方で、「人」との親和性をさらに高めた“第3の道”の登場に期待が集まっている。
- 人手不足対策で完全自動化は逆効果、人とロボットの協力をどのように切り開くか
人手不足に苦しむ中で、工場でもあらためて自動化領域の拡大への挑戦が進んでいる。その中で導入が拡大しているのがロボットである。AIなどの先進技術と組み合わせ、ロボットを活用した“自律的な全自動化”への取り組みも進むが現実的には難易度が高く、“人とロボットの協調”をどう最適に実現するかへ主流はシフトする。
- 協働ロボット、ロボットシステムに残された課題と未来
協働ロボットを現場で活用するのにどのような工夫が必要か――。ロボット技術の総合展示会「2017国際ロボット展」では、ロボットメーカーおよびユーザー企業によるパネルディスカッション「ロボットフォーラム2017」が実施され、協働ロボットの意義について語った。
- 機械は人の仕事を奪わない、“人とロボットがともに働く現場”が拡大へ
2016年は人工知能関連技術が大きな注目を集めて「機械が人間の仕事を奪う」という議論が大いに盛り上がりを見せた。こうした一方で2017年には「現場」において、こうした動きと逆行するように見える「人とロボットが協力して働く世界」が始まりを迎える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.