EVのモデリングを「ミニ四駆」で考える〜バッテリー、モーター、走行の連成問題、現象を本質的に捉えてシンプルに表現〜1Dモデリングの勘所(10)(3/4 ページ)

» 2022年08月17日 07時00分 公開

解析結果と考察

 図1の5つの式を基に未知数、パラメータ、方程式をModelicaで直に書くと以下となる。ここに、g_nは重力加速度を意味する。

model mini4Drive
 import Modelica.Constants.g_n;
 Real Tm;
 Real I;
 Real Om;
 Real Ft;
 Real v;
 parameter Real Rm=1;
 parameter Real Rb=0.8;
 parameter Real E=3;
 parameter Real Ke=1.2e-3;
 parameter Real Kt=1.2e-3;
 parameter Real Gr=5;
 parameter Real Ita=0.6561;
 parameter Real r=0.015;
 parameter Real Mu=0.1;
 parameter Real m=0.1;
 parameter Real Cd=0.3;
 parameter Real A=0.004;
 parameter Real Ro=1.205;
equation
 Tm=Kt*I;
 Om=(E/Ke)-(Rm+Rb)*Tm/(Ke*Kt);
 Ft=Gr*Tm*Ita/r;
 v=Om*r/Gr;
 Ft=Mu*m*g_n+(1/2)*Cd*A*Ro*v^2;
end mini4Drive;

 上式を解くと、

  • けん引力:Ft=0.120[N]
  • 電流:I=0.456[A]
  • モーター回転数:ωM=1817[rad/s]=17349[rpm]
  • モータートルク:TM=0.000547[Nm]
  • 速度:v=5.45[m/s]=19.6[km/h]

という結果が得られる。ここで、バッテリーの容量を1Whとすると、走行時間は、

式12 式12

となり、走行距離は、

式13 式13

となる。

現象の理解

 以上、現象の理解を方程式で表現することで行った。これはこれで重要なことであるが、できれば図として現象を直感的に理解できると役に立つ。ミニ四駆の主要要素はバッテリー、モーター、走行系であり、この3つの要素を支配する現象を1つの図に表現することを試みる。モーターは既に述べたように、回転数ωMとトルクTMの関係式で表現できる。バッテリー電流はトルク定数を介して、モータートルクにひも付けられる。一方、走行系は、

式14 式14

で表現でき、この式に図4のFtとvの定義式を代入すると次式が得られる。

式15 式15

 以上のバッテリー、モーター、走行系に関する式を1つの図で表現すると図5となる。すなわち、モーターの式と走行系の式の交点がモーターの運転点(TMωM)で、このトルクTMと電流の式の交点が電流値Iとなる。

現象の理解 図5 現象の理解[クリックで拡大]

 図5の図表現による現象の理解の応用例として、急勾配の下り坂を走行している状況を考える。この場合、走行系の式は、

式16 式16

となる。mgsinθは急勾配の下り坂を下る際の力で負の値となる。従って、急勾配の下り坂を下る際の走行系の式(二次曲線)は、図6に示すように左側に平行移動する。そうすると、負のトルク、負の電流が発生する。すなわち、バッテリーが充電状態となる。これを「回生」という。図6では分かりやすくするために、モーター特性は変わらないとしているが、実際には、回生制動(回生ブレーキ)により、走行中にモーターに制動トルクを発生させることで、図6に示すよりも大きな電気エネルギーを回収できる。

急勾配の下り坂を走行時の状況(回生) 図6 急勾配の下り坂を走行時の状況(回生)[クリックで拡大]

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