「1Dモデリング」に関する連載。前回行った「ミニ四駆」の構成要素の原理理解、定式化を受けて、今回はミニ四駆全体系のモデリングを行い、解析を実行する。さらに現象を理解する方法としてモデリング結果を図で表現することの有用性に触れる。最後に、「Modelica」によるミニ四駆のモデリング例を示す。
前回は、タミヤの「ミニ四駆」の構成要素であるバッテリー、モーター、ギア、走行系に関して、その原理を理解し、定式化を行った。
今回はこの結果を受けて、ミニ四駆全体系のモデリングを行う。モデリング結果を基に、実際に解析を行うには、各種パラメータを決定する必要がある。その各パラメータの決定方法について述べ、解析を実行し、考察を行う。次に、現象を理解する方法としてモデリング結果を図(グラフ)で表現することの有用性に触れる。最後に、モデリング言語「Modelica」によるミニ四駆のモデリング例を示す。
※注:「ミニ四駆」は株式会社タミヤの登録商標です。
ミニ四駆全体系のモデリングを行うに際して重要なことは、このモデリングを通して何を知りたいのかを明確にしておくことである。多くの場合、知りたいことは「ミニ四駆がどのくらいの速度で走るのか/どのくらいの距離を走るのか」ではないだろうか。そこで、これを目的に全体系のモデリングを考える。なお、ここでは説明を分かりやすくするため定常状態を考えることにし、バッテリーのSOC(充電率)も考慮しないことにする。
前回の知見を基に考えると、速度vはモーター回転数をωM、ギア比をGr、タイヤの半径をrとすると、
となる。なお、色の付いた字は未知数(計算によって求まる値)である。また、走行距離を知るには、速度と走行時間が必要で、走行時間はバッテリーの電流から求まる。電流Iは、トルクTMを、トルク定数KTとすると、
となる。さらに、モーターの特性式からモーター回転数とモータートルクの関係が、
で表現できる。ここに、Eはバッテリーの電圧、RBはバッテリーの内部抵抗、RMはモーターの巻き線抵抗、KEは起電力定数である。モータートルクTMはギアを介して、けん引力Ftに変換される。けん引力はギア損失をηgとすると、
と表現できる。最後にけん引力と走行抵抗(転がり抵抗、空気抵抗)は釣り合っているので、
となる。以上の5つの式に対して、5つの未知数(v、ωM、TM、I、Ft)が存在するので解くことができるはずである。以上の流れを図1に示す。
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