EVのモデリングを「ミニ四駆」で考える〜バッテリー、モーター、走行の連成問題、現象を本質的に捉えてシンプルに表現〜1Dモデリングの勘所(10)(2/4 ページ)

» 2022年08月17日 07時00分 公開

パラメータの決定

 図1の赤字以外のパラメータは事前に決めておく必要がある。以下、要素ごとにその決定方法について述べる。

バッテリーに関するパラメータ

 ここでは、単3アルカリ一次電池を直列に2個使用しているのでE=3[V]とする。内部抵抗はカタログ値から、RB=0.8[Ω]とする。

モーターに関するパラメータ

 図2に、モーターに関するパラメータの決定方法を示す。ここでは、モーターの特性を横軸にモータートルクTM、縦軸にモーター回転数ωMをとって示している。電池電圧、電池の内部抵抗は既に決定済みであるので、トルク定数KT、起電力定数KE、モーター内部抵抗RMを決める必要がある。今、無負荷状態(モータートルクゼロ)のときのモーター回転数をω0とすると、

式6 式6

となり、これから、

式7 式7

で起電力定数が求まる。次に、回転数ゼロのときのモータートルクT0とすると、

式8 式8

となり、これから、

式9 式9

でモーターの巻き線抵抗が求まる。なお、相反定理により、KT=KEである。以上により、モーターのパラメータは決定できる。なお、無負荷時の回転数、回転拘束時のトルクの計測方法はいろいろと考えられる。意外と身近な手段で可能な場合もあるので考えてみてほしい。

モーターに関するパラメータの決定方法 図2 モーターに関するパラメータの決定方法[クリックで拡大]

ギアに関するパラメータ

 対象としているミニ四駆のギア構成を図3に示す。モーター出力軸から、車輪軸までの回転数比を計算すると5分の1となるので、ギア比は、

式10 式10

となる。また、ギアとギアのかみ合い時に効率が10%低下すると仮定すると、この場合、4カ所のかみ合い部があるので、最終的にギア効率は、

式11 式11

となる。

ギアに関するパラメータの決定 図3 ギアに関するパラメータの決定[クリックで拡大]

走行系に関するパラメータ

 走行系に関しては、転がり抵抗、空気抵抗係数はハンドブックから決定することにし、ミニ四駆の質量、前面投影面積は実測により求めることができる。

 以上のようにして求めたミニ四駆のパラメータを図4に示す。

「ミニ四駆」のパラメータの決定 図4 「ミニ四駆」のパラメータの決定[クリックで拡大]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.