皮膚感作性試験代替法が利用拡大、天然抽出物の評価も可能に医療機器ニュース

富士フイルムが開発した、皮膚感作性試験代替法「Amino acid Derivative Reactivity Assay(ADRA)」が、混合物の皮膚感作性の試験方法としてOECDテストガイドラインに収載された。

» 2022年08月15日 15時00分 公開
[MONOist]

 富士フイルムは2022年7月27日、実験動物を使わずに化学物質の皮膚へのアレルギー反応の有無を評価する皮膚感作性試験代替法「Amino acid Derivative Reactivity Assay(ADRA)」が、単一物質に続き、混合物の皮膚感作性の試験方法としてOECD(経済協力開発機構)テストガイドラインに収載されたと発表した。

 皮膚感作性とは、皮膚に接触した際にアレルギー反応を誘発し炎症を引き起こす化学物質の性質。今回ADRAは、皮膚感作性の3過程のうち「化学物質とタンパク質の結合」において、混合物を評価する手法としてOECDテストガイドラインに収載された。

 混合物の皮膚感作性評価を可能にするために、単一物質を対象とした従来の測定法から次の2点が変更されている。1つは、天然抽出物でも算出できるように、被験物質の調整方法をモル濃度から重量濃度に変更した点。もう1つは、吸光検出器に加えて蛍光検出器でも分析できるようにして、被験物質により分析方法が使い分けできる点だ。

 測定方法の変更による試験結果の妥当性は、再現性試験を実施して評価した。その結果、5施設で10種類の化合物について3回ずつ評価したところ、同一施設および異なる施設間で100%の再現性が確認された。

 皮膚感作性試験は、化学物質の新規開発や化合物の安全性評価のために、製品企画や製造に先立ち実施される。健康志向の高まりとともに、近年は天然抽出物を用いた製品開発が増加し、混合物の評価手法が必要とされていた。

 富士フイルムは、2017年に高感度の検出試薬を用いて高精度で皮膚感作性を評価できるADRAを開発。OECDテストガイドラインは、化学物質の特性や安全性を評価する試験方法を国際的に共通化することを目的としてまとめたもので、ADRAは2019年に単一物質の皮膚感作性試験法として収載されている。

 同社は2018年に試薬キット「ADRAキット」を発売し、2019年から富士フイルム和光純薬を通じて同キットを用いた皮膚感作性評価の受託サービスを展開している。今後は、混合物である天然抽出物の皮膚感作性試験を対象に、化粧品会社や化学品メーカーなどに向け、ADRAのさらなる普及を図る。

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