不確実な時代にエンジニアとして誇りを持って生きていくために凡人エンジニアが経営コンサルタントに生まれ変わるまで(11)

ある大手メーカーのエンジニアが、さまざまな紆余(うよ)曲折を経て、新たなキャリアとして経営コンサルタントになるまでのいきさつを描く本連載。最終回となる第11回は、あらためてエンジニアがコンサルティングスキルを身に付けることの意味を説明し、筆者の今後の目標を紹介する。

» 2022年06月22日 09時30分 公開

 私はここまで、平凡な一エンジニアがコンサルティングのスキルを身に付け、クライアントの課題解決ができるようになるまでの歩みをご紹介してきました。しかし、もしかすると読者の皆さんに誤解を与えたところもあったかもしれないと思っています。

⇒連載「凡人エンジニアが経営コンサルタントに生まれ変わるまで」のバックナンバー

 エンジニアはコンサルタントを目指さなければならない──。私がお伝えしたかったのは、そういうことではありません。エンジニアとしての技量を発揮しながら、加えて「問題解決力」を身に付けることで、より優れたエンジニアになることができる。また、「問題解決力」がなければ、これからもエンジニアとして最前線で活躍していくことは難しいだろう。それが、私がお伝えしたかったことです。

 私はコンサルティング部門のトップになりましたが、これからもエンジニアリングの現場から離れようとは思っていません。企業活動において、現場は「小さな歯車」です。その歯車がよりよく回るお手伝いをしながら、経営という「大きな歯車」を回していく支援もする。それができるのが、コンサルティングのスキルを身に付けたエンジニアの強みです。

 現場性と俯瞰性。エンジニアとしての「蟻の目」とコンサルタントとしての「鷹の目」。その両方を持ってクライアントの成長に寄与していくことが、これからのエンジニアの生き方であると私は考えています。そのような仕事を一言で言いあらわせる言葉は、今のところありません。私は「問題解決家」と呼ぶのが一番合っているのではないかと思っています。

 私がこの連載を通じて言ってきたことは、実はただ一つのことです。

「問題解決力を備えたエンジニアになりましょう。それを目指すことによって、自分自身のレボリューションも起きるはずです」

 そのことを、私は自分の体験から自信を持って言うことができます。

若い世代のレボリューションを支援していきたい

 問題解決力を身に付けることは、エンジニアとして誇りを持って生きていくための最良の方法であると私は考えています。スティーブ・ジョブス氏は素晴らしいイノベーターでした。彼は経営者でしたが、本質は最後までイノベーティブなエンジニアだったのだと私は思います。

 PCに向かってプログラムを書いたり、部品を組み立てたりするだけがエンジニアの仕事ではありません。人々や社会の課題やニーズを的確に捉えて、それに対する最高のソリューションを具体的な形で提案していくことができるのがエンジニアの力です。そうやって彼は、iPod、iPhone、iPadといったそれまでになかった製品を世に出し、世界中の人々の生活を大きく変えたのです。

 これからの時代には、エンジニアのみならず、あらゆる職業に問題解決力が求められることになるはずです。「正解」のない時代においては、自ら「問い」を見つけ、それに対する「答え」を自ら見つけていかなければならないからです。

 プロフェッショナルの意味合いも変わっていくことになるかもしれません。与えられた要件に対して、100%、120%の結果を出すのがこれまでのプロの在り方でした。これからは、要件そのものを捉え直した上で、その再定義した要件に対する適切なアウトプットを出していくことができる人がプロと呼ばれるようになる。そんなふうに私は思います。

 現在の私のビジョンは、身をもって体験してきた「問題解決家としてのエンジニア」という考え方を、海外にも広めていくことです。幸い、私が属するModisはAdecco Groupというグローバル人財企業の一員です。ですから、そのビジョンも全くの夢ではないと思っています。

 もう1つ、自分の身におきたレボリューションの経験を基に、若い世代のエンジニアの皆さんのレボリューションを支援していきたいというビジョンもあります。論理的に考える力やコミュニケーション力を身に付けて、自分自身を改革しながら、問題解決家として成長していく──。そんな道筋を作るお手伝いをすることによって、私自身も今以上に成長できるのではないかと考えています。



 約1年にわたる連載におつき合いくださいまして、ありがとうございました。これからも「躍動するエンジニア」として、ともに誇りを持って、それぞれの現場でいい仕事をしていきましょう!(連載完)

筆者プロフィール

桑山和彦(Modis株式会社 コンサルティング事業部 事業部長)

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通信機器メーカー勤務後、リーマンショックを機に株式会社VSN(現Modis株式会社)に転職。入社後はエレクトロニクスエンジニアとして半導体のデジタル回路設計やカメラ用SDK開発業務に携わる。2013年より“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」を推進するメンバー「バリューチェーン・イノベーター・プロフェッショナル」に抜てき。多くの企業で現場視点と経営視点の両面を併せ持った問題解決事案に携わる。現在は、全社的にVIサービスを推進するコンサルティング事業部の事業部長として、企業のバリューチェーン強化、DX推進、人事組織開発について実践的なコンサルティングサービスを推進。Modisのコンサルティング領域拡大をリードしている。

Modis https://www.modis.co.jp/

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