連載
» 2022年05月11日 09時30分 公開

課長や部長の経験もなく、新たに発足した「コンサルティング事業部」のトップに凡人エンジニアが経営コンサルタントに生まれ変わるまで(10)

ある大手メーカーのエンジニアが、さまざまな紆余(うよ)曲折を経て、新たなキャリアとして経営コンサルタントになるまでのいきさつを描く本連載。第10回は、初めてのコンサルティング契約の獲得を契機にVSN(現Modis)のコンサルティング事業が拡大する中で、新たに発足した「コンサルティング事業部」のトップに就任した経緯を紹介する。

[桑山和彦(Modis株式会社),MONOist]

 VSN(現Modis)にとって初めてのコンサルティング契約は、コンサルタントとしては小さな一歩でしたが、社内に大きなインパクトをもたらしました。2018年の年初に掲げたスローガンは「VI(バリューチェーン・イノベーター)に振り切る覚悟。Kuwayama(編注:筆者の桑山和彦氏)に続こう!」となりました。

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 当時のVSNは4000人規模の会社に成長していました。そのスローガンに一社員の名前が入るということは賛否両論あったかと思いますが、私はそれも含めて背負うつもりでした。コンサルタントとして素養がある他の社員も一念発起して、「コンサル契約を取りに行くぞ」という機運が一気に高まりました。まさに、不肖桑山にみんなが続いてくれたわけです。私自身も新たに5件ほどの新規案件を獲得し、コンサルティングフィーもどんどん上がっていきました。

 コンサルティングサービスで初めて契約をいただいてから、私の中にプロとしての自覚がはっきりと芽生えました。契約をいただき、それに見合った成果を出せば、自信がつきます。その自信がクライアントに伝わって成約しやすくなるという好循環に入っていきました。一つのことを成功させると、そこから道が大きく開いていくんだ。最初の壁を突破することが何より大事なんだ――。私は、そう実感しました。

45歳にして平社員から事業部長になる

 2019年には、「VIコンサルティングオフィス」というコンサルタント専門部署が社内に立ち上がり、私はそのメンバーになりました。発足時のメンバーは10人くらいでした。

 専門部署ができて分かったことは、コンサルという生き方は非常に特殊である、ということです。案件を獲得すればするほど実績が生まれ、経験値が高まり、それが大きな自信となっていきます。一方、案件を獲れないと、コンサルタントとしての経験を積むこともできません、そうして差はどんどん開いていきます。

 そのような違いはどうして生まれてしまうのか。結局のところ、クライアントに対して「利他主義」を貫き、それに基づいた自分自身のオリジナルな考え方を持ち、かつそれを表現できるかどうかにかかっているのだと私は思います。エンジニアリングとは、決まった「正解」に向けて最良の結果を出していく仕事です。それに対して、コンサルティングには正解がありません。事実を基に課題を見いだし、それを解決する道筋を自分で見つけていかなければなりません。道筋の見つけ方は人によって異なります。自分なりの道筋を見つけ、それをロジカルに言語化し、自分の言葉でクライアントに提案していかなければなりません。

 私自身を顧みれば、もともとオリジナルな考え方を持っていた方だと思いますが、それを論理的に表現する方法を知りませんでした。コンサルティング研修でその方法を教えていただいたことで、クライアントに提案できるようになり、実践の場数を踏むことによって考え方がより磨かれていきました。

 つまり、向き不向きは確かにあるにしても、訓練と実践によってある程度何とかなるということです。スポーツや楽器の演奏と同じと考えてもいいかもしれません。もともとの能力以上に、練習すること、やってみること、経験を積むことがより大事なのです。

 もう1つ大事なことがあります。それは「勇気」です。クライアントから却下される可能性があったとしても、勇気をもって提案してみる。却下されたら、異なる角度から内容を検討してもう一度提案してみる。それでもだめならもう一度――。そうやって失敗し、恥をかく勇気さえあれば、道は開ける。そう私は信じています。

 2021年からModisとしての新しい中期経営計画がスタートし、VIコンサルティングオフィスは「コンサルティング事業部」に改組されました。ようやくコンサルティングサービスが本格的に事業化されたわけです。私がその初代事業部長に任命されました。課長の経験も部長の経験もない、「桑山って誰だよ」といわれていた平社員がいきなり事業部長に就任したので、戸惑いは少なくありませんでした。しかし、コンサルサービスが事業化されたら、その責任者を務めるのは私しかいないと考えていました。社内で一番場数を踏んできたのは、私だという自負があったからです。

 45歳での初めてのマネジメント職ですから、さまざまな葛藤はありましたが、今2年目にして何とか任務を行っています。事業部長としてのミッションは、2025年度にModisの総売上高の1割をコンサルティングサービスによって達成することです。既に年間の売上高は億円単位になろうとしていますが、目標を達成するには売上高を70億円まで伸ばす必要があります。時給5000円からスタートしたコンサルサービスを70億円に育てる。そう考えれば途方もない目標かもしれませんが、これまで磨いてきたコンサルティング力を生かして、絶対にやり切ろうという強い気持ちで日々の仕事に励んでいます。

筆者プロフィール

桑山和彦(Modis株式会社 コンサルティング事業部 事業部長)

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通信機器メーカー勤務後、リーマンショックを機に株式会社VSN(現Modis株式会社)に転職。入社後はエレクトロニクスエンジニアとして半導体のデジタル回路設計やカメラ用SDK開発業務に携わる。2013年より“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」を推進するメンバー「バリューチェーン・イノベーター・プロフェッショナル」に抜てき。多くの企業で現場視点と経営視点の両面を併せ持った問題解決事案に携わる。現在は、全社的にVIサービスを推進するコンサルティング事業部の事業部長として、企業のバリューチェーン強化、DX推進、人事組織開発について実践的なコンサルティングサービスを推進。Modisのコンサルティング領域拡大をリードしている。

Modis https://www.modis.co.jp/

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