パナソニックのデバイス事業、FAやEVリレーなどコア4事業で年平均8%成長へ製造マネジメント インタビュー(2/3 ページ)

» 2022年06月09日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

多層基板材料に加え半導体材料を新たな強みに

 「電子材料」は、強い高機能多層材の拡大に加え、半導体材料を新たな柱事業に成長させる計画だ。情報通信インフラの成長により、通信速度や処理性能をより求める動きが広がり、高速伝送対応の基板ニーズが拡大。 多層基板材料「MEGTRON」シリーズの拡大に取り組む。さらに、半導体サブストレート用の材料が大手の半導体メーカーに採用され、成長が見込める状況になっているという。

 「半導体周辺の機能的、性能的な向上については、周辺の材料も含めて、さまざまな課題解決を進める必要がある。大手顧客の採用により2024〜2025年までの成長はある程度見込めている。2025年以降はこれらの課題を解決するために上位レイヤーや下位レイヤーとの情報共有を行いながら複合解を解決するオープンイノベーションを進める」と坂本氏は述べている。

photo 電子材料事業の展開[クリックで拡大] 出所:パナソニック インダストリー

EVリレーを核とした統合モジュール化を推進

 「EVリレー」は、既に市場シェアで4割を獲得。さらに「EVリレーを核としてプラスを加えていくことがポイントだ」(坂本氏)とする。まず、高いシェアを持つEVリレー単体の強化を引き続き進める。これらの開発プロセスやノウハウはブラックボックス化し、このEVリレーの技術力を中核に、高出力化や瞬時遮断に対応する統合遮断モジュール化を行い、高付加価値化を図っていく計画だ。「EVリレーに限った話ではないが、部品を組み立ててモジュール化を進めるだけでは競合他社と差別化ができない。組み込むデバイスそのものがユニークであるからこそ差別化ができ、付加価値を作ることができる」と坂本氏は強調する。

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コンデンサーはユニークな材料、プロセス技術でさらに進化

 「コンデンサー」は以前から取り組むユニークな材料、プロセス技術を強化し、汎用コンデンサーでは対応困難なニーズへの対応を進めていく方針だ。情報通信インフラや自動車の電装化で、高性能で高信頼性を持つコンデンサーへのニーズが高まっている。特に情報通信インフラでは、高耐熱、長寿命、大容量化が求められており、車載領域では、小型化と大容量化が求められている。高シェアを獲得している導電性高分子コンデンサー、アルミハイブリッドコンデンサー、xEV(電動車)向けフィルムコンデンサーなどを中心にさらに顧客ニーズに応える製品の開発を進めていく。

 坂本氏は「材料から開発するコンデンサーのような製品では、単品デバイスが半分、組み立てシステムが半分の比率となっているが、核となるのは材料、プロセス技術だ。ここは開発投資が重要になるが、マテリアルインフォマティクス、プロセスインフォマティクスなどの先進技術の導入を積極的に進め、効率化を進めていく」と述べている。

photo コンデンサー事業の展開[クリックで拡大] 出所:パナソニック インダストリー

 これらのコア事業の強化を進めることで、2030年度の1兆8000億円という売上高目標に対し、その内7割をコア事業が占める状況を目指している。「2013年度には2割程度だったコア事業の比率は2021年度には約5割に達しており、これらの成長性のある領域で差別化を進めることで営業利益など事業そのものの強化にもつながってきている。2030年度の目標は高いが、達成可能だと考えている」と坂本氏は語っている。

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