デジタルツインを実現するCAEの真価
連載
» 2022年06月02日 07時00分 公開

非線形解析って何だ!?いまさら聞けない 非線形構造解析入門(1)(1/3 ページ)

多くの3D CADではオプションとしてCAE機能が用意されているが、多くの方が「線形解析」での利用にとどまっており、「非線形解析」にまで踏み出せていない現状がある。本連載では、構造解析でも特に非線形解析にフォーカスし、初心者向けに分かりやすくその特長や活用メリットなどを紹介する。

[水野操 mfabrica合同会社 社長/3D-GAN,MONOist]

はじめに

 皆さん、こんにちは! mfabricaの水野操です。普段は、さまざまなお客さまの設計のお手伝いや受託解析業務などを行っております。また、3D CADやCAE、3Dプリンタ関連の書籍をいくつか出しており、MONOistのメカ設計フォーラムでも、これまで流体解析の連載などを中心に解説記事を複数執筆してきました。

 さて、新たに始まった連載「いまさら聞けない 非線形構造解析入門」では、構造解析でも特に「非線形解析」にフォーカスした内容をお届けしていきます。

 一般的に、構造解析に関する記事や書籍などは「線形解析」に限定されたものが主流だと思います。実際、過去に筆者が執筆した記事や書籍は、ほぼ全て線形解析に関するものですし、セミナーなどで見聞きする内容も線形に関するものがほとんどです。

 しかし、昨今の3D CADでオプションとして提供されているCAEソフト(CAE機能)を見てみると、線形弾性だけにとどまらず、非線形解析までできるものが多くあります。ただ、だからといって皆が非線形解析を活用しているのかというと、そんなことはなく、ほとんどが線形弾性解析の利用にとどまっているようです。また、こうした実情は日本だけの話ではなく、米国でも同様だと聞いています。

 では、筆者自身はどうかと言えば、実はやっている解析のほとんどが非線形解析だったりします。そもそも受託で頼まれるような解析は、問題自体の難易度が高く、非線形性をきちんと考慮しないと妥当な結果が得られないものがほとんどです。そういった理由から、非線形解析の割合が多くなっていると考えています。

 皆さんの場合はどうでしょうか。機械部品などの強度設計であれば、「線形弾性で十分だ」という考えが大半だと思いますが、それでも、通常の線形弾性での解析では「どうにも妥当な解が得られない」といったことが起こり得ます。また、加工プロセスのシミュレーションなどは非線形性を考慮しない限り、現実的な解を得ることができません。

 それにもかかわらず、非線形解析が解析専任者の領域にとどまっているのはなぜでしょうか。その理由は「いろいろな意味で難しいから」という一言に尽きます。筆者自身、初めて商用の非線形解析ソフトを触ってから30年以上たちますが(本当の最初は大学院生時代に論文を書くために自分でプログラムを書いたものになりますが)、今でも「なかなか一筋縄ではいかないな」と感じる日々です。

 何とか妥当な解を得ようと、パラメータのチューニングだけで1日が終わってしまった……ということもよくあります。また、書籍なども極めて専門性が高く、アカデミックな内容が多いので、どうにもなじみづらいというのも現状でしょう。

 今回、少しでも非線形解析に親しみを感じてもらいたい、なじんでもらいたいという思いから連載の執筆を決断しました。本連載の内容だけで必要な情報を網羅的に伝え切ることは難しいでしょうし、既にご存じの方から見れば内容が薄く感じられる部分もあるかもしれませんが、1人でも多くの方が非線形解析に興味を持ち、ご自身の業務に生かしたり、さらに勉強したりするきっかけになれば幸いです。しばらくの間、どうぞお付き合いください。

そもそも「非線形解析」の何が非線形?

 一口に「非線形解析」と言いますが、「非線形」とは“何が非線形”なのでしょうか。また、どのような要因によって、線形ではなく非線形解析が必要になるのでしょうか。

 本連載では、そのあたりのお話からスタートすることにします。また、その要因一つ一つを本連載の中で説明していきます。内容に関しては、できるだけアカデミックな話になり過ぎないよう努力しますが、場合によっては数式の展開がどうしても避けられない部分もあるので、あらかじめご了承ください。

 さて最初の疑問ですが、「非線形解析」とは“何が非線形”なのでしょうか。ごくシンプルにいえば、ある物体に荷重をかけたときに発生する変位の関係が“比例関係にあれば線形”、その関係が“比例でなければ非線形”ということになります。

 他にも特徴があります。例えば、線形解析の計算結果は、材料力学の式で計算したものと一致しますが、非線形解析の結果と材料力学の式の結果は一致しません。

 ……とまぁ、厳密でも何でもない乱暴過ぎる説明ですが、安心してください。この後でもう少し詳しく解説していきます。

線形解析 図1 線形解析[クリックで拡大]
※{f}:荷重ベクトル、{u}:変位ベクトル、[k]:剛性マトリクス
非線形解析 図2 非線形解析[クリックで拡大]
※[Kt(u)]:接線剛性マトリクス

 では、何がそのような非線形性をもたらすのでしょうか? それは、

  1. 幾何学的非線形性(形状非線形性)
  2. 材料非線形性
  3. 境界条件非線形性(接触)

の3つの非線形性です。それぞれ順番に見ていきましょう。

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