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非線形解析って何だ!?いまさら聞けない 非線形構造解析入門(1)(2/3 ページ)

» 2022年06月02日 07時00分 公開

3つの非線形性について

1.幾何学的非線形性

 「幾何学的非線形性」は、「形状非線形性」と呼ぶこともありますが、この非線形性は、3つの非線形性の中で“最も直感的な理解が難しい非線形性”です。

 運動方程式の観点から見れば、変位と歪み(ひずみ)の関係が非線形であるともいえます。この非線形性については、連載第3回で詳しく説明する予定ですが、簡単に言えば、物体の形状が大きく歪んだり、あるいは回転したりすることによって、非線形性が生じます。直感的な理解は難しいのですが、その一方、この非線形性を語らずして、大変形問題を扱うことはできません。

横に引っ張る
引っ張って伸びると引っ張り方向に剛性が低下 図3 引っ張って伸びると引っ張り方向に剛性が低下[クリックで拡大]

2.材料非線形性

 「材料非線形性」は、材料の物性中に発生する非線形性のことで、比較的イメージしやすい非線形性だと思います。

 線形解析において用いられる材料物性値は、「ヤング率(縦弾性係数)」と「ポアソン比」です。そして、応力と歪みはヤング率を介して比例関係にあります。線形解析で対象とするのは、この領域です。

 ところが、金属が降伏応力を超えるような荷重を受けると、材料は塑性(永久変形)します。もはや、応力と歪みは比例の関係ではなくなります。つまり、材料物性の非線形性が生じるわけです。また、ゴムなどは非常に大きな変形をしても元の形状に戻る弾性挙動を示しますが、この過程での応力と歪みは直線ではなくS字カーブを描くような非線形的な挙動を示します。言ってみれば、応力とひずみの関係が非線形ということになります。

 他にも、一定の歪みを維持すると応力が緩和する「応力緩和」や、一定の応力を維持すると歪みが増大する「クリープ」など、複雑な挙動を示す材料があります。このような材料物性値も挙動全体に非線形性を与える原因となります。

材料非線形性の例:弾塑性材料の応力・歪み曲線 図4 材料非線形性の例:弾塑性材料の応力・歪み曲線[クリックで拡大]

3.境界条件非線形性

 非線形性を与える要因の3つ目が「境界条件非線形性」です。この非線形性は、「接触」としても知られています。簡単に言えば、境界条件(拘束条件、荷重条件)の状態によって、物体にかかる荷重と発生する変位の関係が非線形になってしまうというようなものです。

 線形解析では、解析条件として設定した拘束条件と荷重条件が変わることはありませんが(接触条件があったとしても)、物体が大きく変形し、部品間の接触条件が変化していったり、大きく変形する物体にかかる圧力などの向きが変化していったりする場合などは、荷重と変位の関係が比例の関係にはなりません。これも、挙動に非線形性を生じさせる原因となります。

接触面積が大きく変化することで境界条件が増大 図5 接触面積が大きく変化することで境界条件が増大[クリックで拡大]

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