ソニーグループがCMOSセンサーをはじめとするイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野の事業戦略を説明。モバイル向けイメージセンサーの市場拡大は2030年度まで年率約10%で継続する見込みで、高級機種で求められる大判化などの最先端の技術要求に着実に応えていくことで競合他社に奪われたシェアを奪回する方針。
ソニーグループは2022年5月27日、オンライン開催の投資家向け説明会「2022年事業説明会」において、CMOSセンサーをはじめとするイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野の事業戦略を説明した。スマートフォンなどモバイル向けイメージセンサーの市場拡大は2030年度まで年率約10%で継続する見込みで、高級機種で求められる大判化などの最先端の技術要求に着実に応えていくことで競合他社に奪われたシェアを奪回する方針。イメージセンサー金額シェアは、2019年度の53%から2021年度に43%まで低下しているが、2022年度は49%に回復し、2025年度には2021年の投資家向け説明会で表明した60%の必達を目指す。
I&SS事業の2021年度業績は売上高が前年度比6.3%増の1兆764億円、営業利益が同6.6%増の1556億円だった。コロナ禍の影響はあったものの、モバイル向けイメージセンサーで顧客基盤の分散拡大を進めるとともに数量シェアを回復させるなど一定の成果が得られたという。また、事業の多角化に向けて布石を打ってきたセンシング用途の製品ラインアップ拡充や、エッジAI(人工知能)センシングプラットフォーム「AITRIOS」の立ち上げ、長崎テクノロジーセンター(長崎県諫早市)のFab5のさらなる増強や台湾のTSMCが建設を進める国内ファウンドリーJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)への出資を決めた。
イメージセンサー市場の動向については、これまで将来的には市場成長が鈍化すると見ていたモバイル向けイメージセンサーについて、2030年度まで着実に成長を続けるという見立てに変更した。金額ベースのイメージセンサー市場の見通しは、2022〜2030年度の年平均成長率が全体で9%なのに対し、モバイル向けイメージセンサーは同10%となって今後もけん引役になるという。I&SS事業を統括するソニーグループ 上席事業役員でソニーセミコンダクタソリューションズ 代表取締役社長 兼 CEOの清水照士氏は「これまでモバイル向けイメージセンサーの市場拡大を担ってきた多眼化は飽和しつつあるが、今後は高級機種での大判化が進む」と語る。2024年度のスマートフォンの高級機種では、イメージセンサーのチップ面積が2019年度比で2倍になるという予測だ。
スマートフォンの高級機種では、アップル(Apple)やグーグル(Google)などが進める独自AP(アプリケーションプロセッサ)の開発だけでなく、中国メーカーを中心とする汎用APに独自ISP(イメージシグナルプロセッサ)を組み合わせる手法により、他社との差異化要因とする高性能なカメラシステムを追求する動きが広がっている。ここで求められるのが、デジタル一眼カメラに匹敵する大画素/大口径イメージセンサーであり、I&SS事業として開発に注力する方針だ。一方、普及価格帯機種では、汎用APと微細多画素のイメージセンサーの組み合わせが求められるとし、微細画素だけでなく新たな信号処理/アルゴリズムの開発による性能向上で対応する。
モバイル向けイメージセンサーの高付加価値化では、従来の裏面照射型CMOSイメージセンサーと比べて約2倍の飽和信号量を確保し、ダイナミックレンジの拡大とノイズの低減を実現する「2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー」を紹介した。
この他にもモバイル向けイメージセンサーの技術動向として、2024年までに大口径化やAI処理などによって静止画の画質がデジタル一眼カメラを超え、2030年に向けて静止画、動画、演出の3軸で技術の進化が進むという。2025〜2029年には、マルチカメラ進化、高速読み出しの進化、エッジAIの進化、距離情報との連携が進み、これらの3軸の技術進化を支える見込みだ。「モバイルイメージングは引き続きテクノロジードライバーとして位置付けられており、技術進化の余地が大きい領域だ。新たな撮影体験を提供すべく、中長期にわたって開発を進める」(清水氏)という。
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