これまで将来的な成長を期待して注力してきたセンシング事業は、2021年の投資家向け説明会で2025年度の売上高比率を30%まで高めるという目標を示していた。しかし、モバイル向けイメージセンサーの市場拡大が今後も続くこと、モバイルや自動運転車などの一部領域で本格普及にもう少し時間がかかることなどを加味し、「目標値として適していない」(清水氏)と判断して今回からはセンシング事業の売上高比率は発表していない。
ただし、車載向けイメージセンサーについては順調に売上高を伸ばしており、年平均成長率は2020〜2022年度が約91%、2022〜2025年度が約21%となっている。2025年度時点で、全世界の車両販売台数の80%を占めるグローバルトップ自動車メーカー20社のうち75%に当たる15社との取引を見込んでいる。
車載向けイメージセンサーでは、車両1台当たり6〜8個のカメラを搭載するADAS(先進運転支援システム)領域のうち、テクノロジードライバーに位置付けられるフロント向けに注力し、自動車メーカーやメガサプライヤーなどのプラットフォーマーにアプローチする。フロント向けの技術展開をサラウンド向けにつなげるとともに、低価格だが開発サイクルが比較的短いリア向けの商談獲得も進める。AD(自動運転)領域は車両1台当たり16〜20個のカメラを搭載するものの、現時点では将来の市場立ち上がりを想定した先行投資の段階となる。
ADAS領域のフロントとサラウンド向けの差異化技術とするのが、カメラやLiDAR、ミリ波レーダーなど異なる方式のセンサーのローデータを信号処理の前に取り出して、最適な特徴量を抽出し融合することで高精度な物体認識を行う「アーリーフュージョン」である。ソニーグループとして開発したコンセプトカー「VISION-S」にも採用されている技術だ。現在、フロントセンシングでカメラとミリ波レーダー、サラウンドセンシングの駐車支援機能でカメラとLiDARのアーリーフュージョンの開発を進めており、特に駐車支援機能については一部メーカーに提案を始めるなど早期の採用を決めたい考えだ。
センシング事業で市場拡大を期待しているのが工場などのインダストリー領域である。同領域向けでは、これまでのグローバルシャッター対応、偏光、ToF(Time of Flight)などに加えて、大型のグローバルシャッター対応、イベントベースビジョンセンサー(EVS)、短波長赤外(SWIR)、UVなどさまざまな方式のイメージセンサーを投入してラインアップを拡充している。これらの多種多様なラインアップにより、対応可能なユースケースも増えているという。
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