VRシステムの開発を手掛ける雪雲は2022年5月26日、東京都内で次世代のメタバースプラットフォーム「The Connected World」に関する記者発表会を開催した。日本発のThe Connected Worldを世に送り出すことで、メタバースプラットフォームのスタンダードを目指す。
VR(仮想現実)システムの開発を手掛ける雪雲(長野県長野市)は2022年5月26日、東京都内で次世代のメタバースプラットフォーム「The Connected World」に関する記者発表会を開催した。
The Connected Worldとは、「World」と呼ばれる主催者が決めたレギュレーション/ルールに基づく仮想世界と、その中に作られる複数の「Land」と呼ばれる仮想スペースで構成されるメタバースプラットフォームだ。同社は、日本発のThe Connected Worldを世に送り出すことで、メタバースプラットフォームのスタンダードを目指す。
現在、同社はフェーズ1として、The Connected Worldの正式リリースと同プラットフォームを用いた自社開発のゲーム(βテスト)の提供開始(2022年12月以降を予定)を目指し、開発を進めている。メタバースプラットフォームであるThe Connected Worldは、同社のコア技術である「VRun System」の利用の他、Landの作成と編集、そして、アバターやスクリプトなどの作成/定義などが可能なクリエイションエディタ「Metaverse Engine」によって、メタバース内での自由な表現を可能にする。
中でも、The Connected Worldの競合優位性を発揮する存在が、コア技術のVRun Systemだ。VRun Systemとは、制限のない自由移動、ストレスのない長時間体験、ハイクオリティーなグラフィックスの実現、そして大規模同時接続(1つのLandで数千人規模)を可能としながら、VRに代表される没入型コンテンツにありがちな「VR酔い」を大幅に抑制することができる同社独自技術である。
VR酔いは、自分自身が静止しているにもかかわらず、視覚からの情報によって、移動しているかのように感じてしまう(錯覚してしまう)「ベクション」によって引き起こされる。
このVR酔い対策について、雪雲 CEOの伊藤克氏は「一般的なVR酔い対策は、このベクションを“減らす”ために、高フレームレート、低遅延、加速度なしで急激な視界の変化をもたらし、一時的にVR酔いをごまかしているといえる。これに対し、VRun Systemでは、ベクションを減らすのではなく、ベクションを“脳に許容させる”生理学的アプローチをとる。急激な視界の変化をなくし、脳が緊張状態に陥る頻度を減らすことで、長時間体験しても疲れにくく、VR酔いが発生しない環境を作り出している」と説明する。
例えば、一般的なVR酔い対策では、90fps以上の高フレームレートを維持しつつ、アバターの動きを人間の歩行速度内に抑え、向いている方向にしか移動できないなどの制限を設けていることが多い。また、激しいアクションを控え、ジャンプ動作などを行った際には視界を狭めるといった対策などが施されている。
一方、VRun Systemでは、処理負荷が掛かってフレームレートが30fps程度まで下がってもVR酔いが発生しにくく、表現力の高いメタバース空間を作り出せるとともに、大規模な同時接続にも対応できるという。また、人間の歩行速度を超えた高速移動やサイドステップ、バックステップ、視点をロックオンしながらの移動、激しいアクションなども実現可能だとし、描画遅延や加速度がある状態でもVR酔いが極限まで軽減されるとしている。
「従来技術では、個人差もあるが15分程度でVR酔いが生じるため、体験時間を短く設定したVRコンテンツが多かった。VR酔いを極限まで低減できるVRun Systemを用いることで、長時間、ストレスなく、快適にメタバース空間を楽しむことができる。時間的な制約がなくなることで、コンテンツの幅が広がり、さまざまな用途での活用が期待できる」(伊藤氏)
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