へレウス・アムロイは、同社のアモルファス合金を完成品に近い状態まで製造してから顧客に提供するニアネットシェイプ製造を採用している。製造法としては、3Dプリンティングと射出成形の2種類がある。アモルファス合金のベンダーは既に幾つかあるが、射出成形による提供がほとんどで、3Dプリンティングと射出成形の両方をカバーしているのはへレウス・アムロイだけだという。
3Dプリンティングでは、パウダー化したアモルファス合金とトルンプ製のレーザー金属溶融方式3Dプリンタを用いており、20cm角サイズまでの造形に対応している。将来的には1m角サイズの大型部品の製造も視野に入る。2022年3月に発売されたゼンハイザーのイヤフォン「IE 600」のハウジングは、アモルファス合金の3Dプリンティングで製造されている。
一方、射出成形では独自の装置を開発しており、±10μmという厳しい公差に収まる形での大量生産に対応。アモルファス合金を用いた部品の製造では、プロセス温度が高くなりすぎることで結晶構造に戻る再結晶化という課題があるが、へレウス・アムロイでは3Dプリンティングと射出成形の両方式で再結晶化が起こらない条件などを確立している。
なお、原材料コストを除いた製造コストイメージについては、3DプリンティングがチタンのMIM(金属粉末射出成形)とステンレス鋼のマシニングの中間、射出成形がステンレス鋼のマシニングとアルミニウムマグネシウムのダイカストの中間としている。
また、高い強度とひずみ性能を実現できる材料であるため、肉厚の最適化やハニカム構造などの形状最適化による構造特性の最適化や軽量化にも対応しやすい。引張強度や耐腐食性がチタンのグレード5やマルテンサイト系ステンレス鋼を上回っていることから、部品材料としての信頼性が高く、航空宇宙用途での採用も期待できる。例えば、米国の火星探査に用いられる大型ローバー「Mars 2020」に搭載されるドリルヘッドは、ヘレウス・アムロイのアモルファス合金製となっている。
へレウスが日本国内での事業展開で期待している用途は、産業用ロボットの歯車や機械要素といった構造部品と、圧力センサーのハウジングなど電子部品のパッケージ材料である。特に、産業用ロボットの構造部品では、弾性や耐摩耗性、耐クリープ性などで従来にない性能を実現可能であり、世界市場で高いシェアを持つ国内産業用ロボットメーカーへの提案を強化したい考えだ。また、マイクロオプティクス向けの金型では、高い表面加工精度に加え、低熱伝導率による加工時の高いエネルギー効率が特徴になるという。
深刻な材料不足と高騰化、設計現場で何ができるか?
金属積層造形のノウハウを群馬発で、ミシュランが共創拠点を太田サイトに設立
独自のデジタル造形技術で高品質造形、ワイヤレーザー方式金属3Dプリンタ
CFRP対応大型3Dプリンタ、独自プロセスと高耐熱樹脂で金属並みの強度を実現
純国産ペレット式金属3Dプリンタの実働デモや3Dプリントオフィス家具を訴求
エプソンが産業用3Dプリンタを開発、材料押し出し式で汎用材料に対応Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
メカ設計の記事ランキング