歯車の歯形は、「インボリュート歯車」を用いるのが一般的です。これは、軸断面形状が「インボリュート曲線」となるものです。インボリュート曲線とは、1つの円(基礎円)に巻き付けられた糸を緩みなく引きほどいていったときに、糸の端点が描く軌跡のことをいいます。
インボリュート歯車が多用される理由は、伝達効率や加工のしやすさに加えて、歯車の取り付け軸間距離に多少の誤差があってもかみ合い精度が良く、互換性に優れている点が挙げられます。
このインボリュート曲線は、基礎円直径が無限大になると直線に近づいていきます。言い換えると、基準円直径が無限大の歯車は直線の歯形になるということであり、これを「基準ラック」と呼びます。基準ラックに関しては、「JIS B 1701-1:2012 円筒歯車−インボリュート歯車歯形−第1部:標準基準ラック歯形」で規定されています。
歯車の図面を完成させるためには、要目表を図面に記載する必要があります。その例として、JISの記述を確認してみます。
歯車の図示(JIS B 0003:2012より抜粋/編集)
4.1.部品図の要目表および図の記入事項
歯車の部品図は、要目表および図を併用し、それぞれの記入事項は、次による。
歯車の組立図(かみ合う歯車など)や他の種類の歯車、またそれ以外の機械要素など、JIS製図についてはまだまだ解説しなければならない内容がたくさんあります。3D CADの運用により、2DによるJIS製図が不要になったわけではなく、3Dモデルに製造情報を注記として付加する「3DA(3D Annotation)」をしっかりと運用するためにも、正しい製図の知識は必要です。
本連載では、全てのJIS製図について触れることはできませんでしたが、必要に応じて適宜JIS規格を確認することで、正しい設計知識を身に付けることができます。これは設計入門者だけでなく、ベテラン設計者にもいえることで、筆者自身も折に触れてJISに目を通す必要性を強く実感しています。
使用する3D CAD環境によって機能も異なり、全てがJISに完全に一致していないかもしれませんが、JISによる標準を理解した上で運用することが重要です。長期間、本連載にお付き合いいただきありがとうございました。 (連載完)
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