RTOS的に使えるがRTOSではない「QP」はMATLABの代替候補にもなり得る?リアルタイムOS列伝(22)(1/4 ページ)

IoT(モノのインターネット)市場が拡大する中で、エッジ側の機器制御で重要な役割を果たすことが期待されているリアルタイムOS(RTOS)について解説する本連載。第22回は、厳密にはRTOSではないものの、RTOS的な利用も可能なフレームワーク「QP」を紹介する。

» 2022年05月09日 07時00分 公開
[大原雄介MONOist]

 今回ご紹介する「QP」は、厳密な言い方をするとそもそもリアルタイムOS(RTOS)と言えない気もしなくもない(というか、QP自身がRTOSとは違うと説明している)が、分類としては広義のRTOSという感じになっているので、そのあたりも含めてご紹介したい。

⇒連載記事「リアルタイムOS列伝」バックナンバー

GPLで公開し、商用製品向けにはNon-GPLで提供

 QP、正式には「Quantum Platform」であるが、説明によればQPとはオープンソースベースのReal-Time Embedded Frameworks(RTEFs)とされる。

 細かい説明は後にして、これを提供しているQuantum Leapsはオープンソースベースの企業である(図1)。要するに、同社が提供するソフトウェアは全てオープンソースの形で公開される。ではどうやってビジネスをしているかといえば、それらのライセンスとサポート、カスタマイズなどである。同社が提供するソフトウェアは、100%GPL準拠の形で提供される。つまり、これを利用する際にはコストが一切かからない代わりに、当然GPL縛りが入ることになる。そこで、商用製品向けにはNon-GPLのライセンスが別途同社から販売されており、これを利用すればGPL縛りに捕らわれることなくアプリケーションの開発ができるという仕組みだ。

図1 図1 Quantum LeapsのWebサイト[クリックでWebサイトへ移動]

 このあたりはQuantum Leapsのこだわりの部分で、FAQで「なぜBSDやMIT Licenseにしないのか?」という問いに対し「こうした、いわゆる『寛容な』オープンソースライセンスは、一般のユーザーからオープンソースプロジェクトに還元することを要求しない。これは長期的にソフトウェアの改善や改良、保守をし続けるためのインセンティブを失うことになる」と回答している。商用向けにはきちんとライセンス料を取り、それを同社が提供するソフトウェアの開発資金に回す、という道筋を示した格好である。

 ちなみに正式な価格はこちらに掲載されているが、Single Products Licenseが2995〜4995米ドル、Product Line Licenseが1万7970〜2万9970米ドル、Site Licenseで2万3950〜3万9950米ドルとなっており、それほど高価ではない。面白いのは、同社では1日分の作業コストを800米ドルとした上で、例えば「QP/C」のSingle Product Licenseの価格2995米ドルは3.75日分の作業コストである、と示していることだ。つまり、腕っこきのエンジニアを雇ったとしても数日では済まないようなものを、3.75日分のコストで提供しますよと説明しているわけで、これはなかなか面白い試みである。

 このQuantum Leapsは、Miro Samek博士により2005年に米国ノースカロライナ州で創業された。現在も会社規模はそれほど大きくない。というか、そもそも会社所在地が明らかに森の中の別荘地か何かという感じで、あくまで会社登記上の所在地を、自分か誰かの関係者の別荘か何かにしているだけというように見える。

 創業年の2005年8月には、早くもQPのVersion 3.0.10 Betaをリリースしている。正式版となるのは2006年2月にリリースされたVersion 3.1.05だが、逆に言えばQuantum Leapsの設立前からSamek博士はQPを開発しており、Version 3.0の頃に法人化を図った、という感じのようだ。ちなみにその2006年には「QP-Nano」と呼ばれる省フットプリント版のQPもリリースされている(現在はQPに再統合)。

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