富士フイルムは、アルツハイマー病への進行をAIで予測する技術を用いて、軽度認知障害患者が2年以内にADへ進行するかどうかを最大88%の精度で予測することに成功した。
富士フイルムは2022年4月13日、アルツハイマー病(AD)への進行をAI(人工知能)で予測する技術(AD進行予測AI技術)を用いて、軽度認知障害(MIC)患者が2年以内にADへ進行するかどうかを最大88%の精度で予測することに成功したと発表した。国立精神・神経医療研究センターとの共同研究による成果だ。
深層学習を用いた画像認識の精度向上には、数多くの学習データが必要となる。現状では、世界最大のAD研究プロジェクト「NA-ADNI」の公開データベースでも、AD進行予測に利用できるMCI患者データは1000例前後しか存在しない。
その限られた学習データで予測精度の高いAI技術を確立するため、脳内の特定区域を対象とした深層学習によるAD進行予測AI技術を開発した。対象としたのは、ADの進行と関連性が高いとされる、海馬と前側頭葉を中心とした部分となる。
学習データとしてNA-ADNIのデータを利用し、深層学習を用いて海馬と前側頭葉を中心とする両区域からAD進行に関わる微細な萎縮パターンを抽出して特徴量として算出した。特定区域のみを学習させることで、脳全体を学習したAIよりもADの進行と関連性が高い海馬領域や扁桃体領域の微細な萎縮パターンに注目するようになる。そのパターンから、ADへの進行を高精度で識別可能になった。
同技術を検証するため、NA-ADNIと日本のAD研究プロジェクト「J-ADNI」のデータベースを用いて、2年以内のMCIからADへの進行を予測。正解率はNA-ADNIで88%、J-ADNIで84%の結果となり、異なる人種でも高い精度で予測できることが示された。正解率と同様にAIの重要な精度指標となるAUC(ROC曲線下の面積)でも、高精度でAD進行が予測できた。
ADの新薬開発のため、MCI患者を対象にした臨床実験が実施されているが、多くが成功に至っていない。その理由の1つに、2年以内にADへ進行するMCI患者が2割未満と少なく、治験薬を投与しない対照群との統計的な有意差を証明できないことが挙げられる。臨床試験の患者選考に同技術を活用することで、新薬の有効性を正しく評価できる可能性があるため、今後その有用性をさらに検証するとしている。
アルツハイマー型認知症の超音波治療、医師主導治験を開始
アルツハイマー病の病因物質を生み出す酵素の多様性を発見
アルツハイマー病変の検出を血液検査で、精度は髄液検査やPETイメージングに匹敵
アルツハイマー型認知症に超音波治療の治験、根本的に治療できる可能性も
糖尿病の影響で、軽度のアルツハイマー病が悪化することが明らかに
血液数滴からアルツハイマー病のバイオマーカーを検出するシステムを発売Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
医療機器の記事ランキング
コーナーリンク
よく読まれている編集記者コラム