現在は量産化に向けて試作モデルの設計・開発を進めている段階だが、まずは2022年中に少量生産で、組み立てキットの販売を検討している。その真意は「育てながら開発する」というICOMAのスタンスに共感できるユーザーに“初期ユーザーとして開発に参加してもらいたい”という思いが込められている。
「まずはユーザーとつながり、顔の分かる関係性の中で使用してもらいながら、フィードバックを得たいと考えています。改善点があればすぐに対処できる状態で、まずは製品を出荷し、最終的にはもっと広い層に届けたいと思います」(生駒氏)
また、量産時には金型を極力使わずに製造し、3Dプリント品や調達しやすいパーツで構成することを検討しているという。量産にかかる初期投資を抑えつつ、ユーザーも独自にカスタマイズしやすい設計が実現できれば、楽しさと実用性を兼ね備えたバイクを、低価格で提供できるのではないかと生駒氏は考える。
「スタートアップ業界において“hardware is hard”といわれるように、量産・製造時にかかる莫大な初期投資はスタートアップにとって最大のネックです。そこで量産コストを抑える工夫や、新しい製造技術を積極的に導入することが重要だと考えています。3Dプリンタによる製造もうまく取り込みたいですし、後輪のモーターも電動キックボード用に普及しているものを流用して調達コストを抑える工夫をしています」(生駒氏)
さらにその一方で、ユーザー自身の手によるカスタマイズ費用も下げたいという。
「最近のバイクのカスタムは、数十万〜数百万円かけないとお話にならないという状況で、若者のバイク離れが進む要因にもなっています。高額なパーツだけでなく、本体側面をカッティングシートで張り替えるだけで自分の生活に馴染むようにして、低コストでカスタマイズできるようにしたいと考えています。その先に、従来のバイク文化としてのカスタマイズもできる余地を残すことが理想です」(生駒氏)

展示会で披露された「タタメルバイク」。カスタマイズできる余地を残すことで、ユーザーのライフスタイルに寄り添うデザインを目指すと同時に、バイクのカスタマイズ文化にも馴染む仕様になっている[クリックで拡大] ※撮影:筆者電動で駐車場いらず、非常時には電源としても活用できるといった現代のニーズを押さえつつ、玩具業界で培った変形の美学とバイクのカスタム文化をミックスさせたICOMAのタタメルバイク――。新しい時代のモビリティに、私たちが実際に乗車できる日はそう遠くない。
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