パナソニックが新体制で進める原点回帰、スローガンに込めた創業者の90年前の思い製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

パナソニックグループは2022年4月1日から事業会社制(持ち株会社制)へと移行し、新たな中期経営計画を発表した。これらの新体制への移行を進め、CEO就任から1年がたったパナソニック ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 グループCEOの楠見雄規氏が報道陣の合同インタビューに応じ、これまでの取り組みの手応えと新スローガンの狙い、中期経営計画のポイントなどについて語った。

» 2022年04月15日 06時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニックグループは2022年4月1日から事業会社制(持ち株会社制)へと移行し、新たな中期経営計画を発表した。これらの新体制への移行を進め、CEO就任から1年がたったパナソニック ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 グループCEOの楠見雄規氏が報道陣の合同インタビューに応じ、これまでの取り組みの手応えと新スローガンの狙い、中期経営計画のポイントなどについて語った。

90年前から訴えてきた「幸福の安定化」

photo パナソニック ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 グループCEOの楠見雄規氏

 パナソニックグループは2022年4月1日から、パナソニック ホールディングスの傘下に8つの独立企業である事業会社が入る持ち株会社制へと移行した。パナソニック ホールディングスでは、この事業会社を主役と位置付けており、新体制を「事業会社制」と呼び、それぞれの事業会社が独立運営を行うことで意思決定を迅速に行い、それぞれの市場で抱える顧客に最適な形で事業展開を行えるようにしている。

 2022年4月1日には、2024年度(2025年3月期)までに累積営業キャッシュフローで2兆円、ROE(自己資本利益率)10%以上、累積営業利益1兆5000億円を目指す中期経営計画を発表。併せて、具体的な方向性として「地球環境問題の解決への貢献」と「心身ともに健康で幸せな状態を『くらし』と『しごと』において実現(ウェルビーイング)」の2つを掲げ、これらを象徴する新たなブランドスローガンとして「幸せの、チカラに。」を掲げている。

photo パナソニックグループの目指す姿[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 その中で楠見氏は新たなブランドスローガンについて、パナソニック創業者である松下幸之助氏が目指していた姿と同じだということをあらためて強調した。松下幸之助氏は1932年に当時の全社員を集め「第1回創業記念式」を開催し、産業人の使命として「水道の水のごとく、物資を無尽蔵たらしめ、無代に等しい価格で提供することにある。それによって、人生に幸福をもたらし、この世に楽土を建設することができるのである」と語っている。これがメーカーの役割としてよく知られるようになった「水道哲学」である。同時に松下幸之助氏はその場で「人間の幸福は、物心両面の豊かさによって維持され向上が続けられる。精神的な安定と、物資の供給が相まって、初めて人生の幸福が安定する」という言葉も残しており、モノと心の両面を満たしてこそ幸福が成り立つ「物心一如」の考えを示している。

 楠見氏は「中期経営計画ではあらためてウェルビーイングを方針として示したが、急に打ち出したものではない。もともと90年前に創業者が『幸福を安定化させる』ということを使命として訴えており、これはまさにウェルビーイングそのままだ。そして、それをあらためて呼び起こすために新しいブランドスローガンの『幸せの、チカラに。』を作った」と訴えた。

 一方で、楠見氏はCEO就任後2年間は競争力強化に費やすという方針を示したが、就任後1年が経過する中で「社内が総じて変わったことはないが、新たな動きによる変化も生まれつつあり、改善のスピードは上がっている。今までは事業計画を立て、それを達成すること最大の目標に各事業が動いてきたが、それが競争力を阻害してきた面がある。『目標だけ達成できればよい』という発想になり、新たな改善に意識が向かないような状況があったからだ。まだ、こうした仕組みや文化が全て変わったとはいえないが、徐々に考え方が変わり、そして具体的にどういう取り組み方をすればよいのか、仕組みをかえたりアクションにつなげたりする動きは増えてきている」と手応えについて述べている。

photo 新たなブランドスローガン[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 次ページでは、楠見氏に対する報道陣との主な一問一答の内容を紹介する。

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