ALANコンソーシアムは水中光無線技術の社会実装に向けては、橋梁など水中構造物の点検、養殖場の管理や監視、水質調査、災害調査などに用いる水中ドローンへの適用を想定している。
例えば、岸や船の近傍で利用されている水中ドローンについて、岸や船に縛られない柔軟な運用を可能にする取り組みを段階的に進める。まずは「光無線化STEP1」として、LTEなどの通信機能を持つ空中ドローンとブイで海表面に浮かした光中継器を光無線通信でつなぎ、光中継器と水中ドローンは光ファイバーテザーでつなぐことを想定している。この光無線化STEP1では、空中と海表面で光無線通信を行っているものの、水中光無線通信は使用していない。
次の「光無線化STEP2」で、岸にある通信局からの光ファイバーを接続した光中継器や、洋上の無線中継ブイと光ファイバーテザーで有線接続した光中継器と水中ドローンを水中光無線通信でつなぐ。これによって、水中ドローンをテザーから解放できる。そして「光無線化STEP3」では、無線中継用洋上ロボットと光ファイバーテザーで有線接続した光中継器を使って水中ドローンを運用することになる。
光無線化のSTEP2と3では、通信範囲を5~30m、通信速度を5Mbpsと設定しており、海中で実証した1Gbps×100mよりもはるかに低い値となっている。島田氏は「1Gbps×100mはチャンピオンデータだ。これを基に、光軸合わせが必要なことや海中の水流や濁度、熱などの影響に耐え得る、確実に通信でつながっている状態を維持する指標としてこれらの数字を想定している」と述べる。
また、2022年度以降の活動では外部資金の獲得も必要になってくる。水中光無線通信WGの1Gbps×100mという成果は、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度JPJ004596」の支援による3年間で1億円の資金が基になっている。今後は、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)などから10億円レベルの外部資金を得ていきたい考えだ。
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