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» 2022年02月22日 16時00分 公開

異常に強いサプライチェーンを作るため、グローバルで除くべき“ムダ”「5つのムダ」から取り組むDX時代の真のカイゼン(3)(1/2 ページ)

本連載では製造業が取り組むべき、DX時代の「真のカイゼン」について解説する。最終回となる第3回ではサプライチェーンのカイゼンを扱う。敏しょう性、回復力、速度を備えたサプライチェーンを作るのに必要なものは何かを紹介したい。

[佐藤幸樹,MONOist]

 これまで日本の製造業は、現場を中心とした「カイゼン」を重ねることで変革を続けてきた。しかし、このカイゼンの取り組み自体も、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」時代に対応させたものに変えていく必要がある。

 連載第2回では、「現場・グループ内」に存在するムダの解消について説明した。一方で、日本の製造業がグローバル展開するのが当たり前となってきた昨今でも進んでいないのが、工場外、国内拠点外の、サプライチェーンを含むグローバル全体でのカイゼンだ。今回は、「グローバル全体」で存在するムダを解消し、DXやビジネス全体での効率化を達成して経営に貢献する真のカイゼンについて考えてみたい。

⇒連載「『5つのムダ』から取り組むDX時代の真のカイゼン」のバックナンバーはこちら

(4)サプライチェーンが“見えない”ことで発生するムダ

 2021年は、世界中のサプライチェーンが大混乱に陥った。半導体や樹脂材料の不足、コロナ過に伴う各国の活動規制、コンテナ、スペース不足などさまざまな問題が発生し、グローバルサプライチェーンに長期的な影響を及ぼし、物流コストも増加させた。湾岸に荷物の入ったコンテナが積み上げられているものの、ドライバー不足で積み荷を運搬できず、店頭では商品が不足している、という海外のニュースを見た方も多いだろう。

 2021年3月に起こったスエズ運河の大型コンテナ船座礁事故も大きな話題となった。世界の海上流通の約12%が利用するといわれるスエズ運河が1週間利用出来なくなったこの事故は、該当のコンテナ船に関わっていた企業以外にも影響が及んだ。このように立て続けに発生する予想外の事態を目の前にすると、「グローバルサプライチェーンを構築する上では、BCP(事業継続計画)対策を必ず考慮しなければならない」という昔からの忠告を受け入れざるを得ないように思う。

レジリエンス戦略を考える

 BCP対策でまず必要となるのが、サプライチェーン全体の可視化だ。「在庫は把握できているのか?」「余剰在庫を抱えていないだろうか?」といった基本的なところはもちろん、「オーダーと物流情報が追跡できているか?」「最適な物流コストでオペレーションされているか?」「貿易コンプライアンスは順守できているか?」など、しっかりと見える化すべきポイントは多岐にわたる。

 もちろん、サプライチェーンを可視化しても足りないコンテナを増やせるわけではなく、滞っている物流網が円滑に動き出すわけではない。しかしここで気を付けたいのが、現状、多くの製造業がサプライチェーン全体ではなく、個々の部門が管轄する部分だけを見てしまっているという点である。

 カイゼンや問題対応も全体最適ではなく部分最適でとどまってしまう。例えば、工場での生産遅れにより納期に間に合わないことがギリギリで明らかになって、営業部門が通常の船便ではなく、航空輸送に切り替えて対応したケースを想定しよう。輸送コストは一気に跳ね上がる。普段のカイゼンでいくら工場の生産コストを限界までしぼっていても、このような予定外の輸送費の上乗せがあれば、サプライチェーン全体でのトータルコストは増加してしまう。

 トータルコストの上昇はQCD(品質、価格、納期)における“よどみ”となる。よどみの出現を防ぐには、サプライチェーンを可視化することで、何か起こった場合に全社的な視点で敏速(Agility)に対処できる体制を築くべきなのである。

 さらに可視化されたサプライチェーンにおいては、レジリエンス戦略が重要となる。レジリエンスとは、日本語に訳すと適応力、対応力、回復力を意味する。サプライチェーン上の異常とその影響を迅速に把握し、以下の図のように、調達物流、生産戦略、製品物流の全体でレジリエンスを高められるかどうかが問われている。

サプライチェーンのレジリエンスをいかに高めるか[クリックして拡大] 出所:インフォアジャパン
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