【総括】日本のモノづくり再浮上のために――目指せ、製造業発のクールジャパン:異色の日本人社長が見た米国モノづくり最前線(5)(2/2 ページ)
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日本のモノづくりの強みとして、筆者が一番強調したいのは「応用研究」や「応用技術」の力です。基礎研究では資金力(図2)でどうしても米国や中国に追い付けませんが、要素技術を組み合わせて新しいモノを作り出すのは日本のお家芸ともいえます。特許庁の調査データを見ると2021年の特許出願件数は日本が米国をしのいでいます(図3)。これは、わが国の応用技術の力を示す1つの数字といえるのではないでしょうか。
図2 主要国の研究開発費推移。研究開発の予算では米国と中国が突出[クリックで拡大] 出所:経済産業省「我が国の産業技術に関する研究開発活動の動向 −主要指標と調査データ−」(2021年11月)
図3 国地域別特許出願件数(2020年)。特許出願件数では日本が他国をしのぐ[クリックで拡大] 出所:特許庁「Facts and Figures on Trends in Intellectual Property 数字で見る知財動向」
国内には応用技術開発を振興する研究機関も数々あり、代表的なところを挙げれば、産業技術総合研究所(AIST)、理化学研究所、物質・材料研究機構(NIMS)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などがあります。これらの組織は予算も比較的潤沢でNEDOが年間約1500億円、AISTと理化学研究所が約1000億円、NIMSが約270億円といわれており、研究者などの人材もそれぞれ数千人規模で抱えています。
米国Harvard University(ハーバード大学)で教壇に立つ未来学者のエイミー・ウェブ氏はその著書「シグナル:未来学者が教える予測の技術」の中で、1997年、秋葉原でインターネットにつながる携帯電話端末を見て未来へのシグナルが聞こえたと書いています。スマートフォン端末は1992年に米国で誕生したといわれていますが、その機能やサービスの在り方を世界に先駆けて示したのはNTTドコモの「iモード」ではなかったでしょうか。そこにはネットワーク、デジタルコンテンツ、携帯電話の融合がありました。いわゆる「ガラパゴスケータイ」の誕生ですが、まさにここには日本独自の応用技術の妙がありました。
もう1つ例として挙げたいのがユニクロの「ヒートテック」です。東レはユニクロから「着心地が良く、暖かい肌着」という依頼を受け、レーヨン、マイクロアクリル、ポリエステル、ポリウレタンという4つの繊維を組み合わせた新しい生地を開発しました。その苦労は尋常ではなかったようですが、努力が実って生まれたのが吸湿発熱、保温性、速乾性、伸縮性を備えた機能肌着「ヒートテック」です。この商品は両社の事業成長に貢献しています。
「クールジャパン」といえば、今はアニメの方が主役になっているようですが、筆者はモノづくりの世界でもう一度クールジャパンを再現したいと思っています。ロボティクス、AI(人工知能)、VR(仮想現実)をはじめ、今、世の中には面白そうな技術があふれています。リスクを恐れない経営者の決断と新しい発想を持った若いエンジニアたちの冒険心が合わされば、“製造業発のクールジャパン”も決して夢ではありません! (連載完)
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今井歩(いまい あゆむ)
オランダの工科大学で機械工学を学び、米国Harvard Business Schoolで経営学を修める。日本ではソニーやフィリップスに勤務し、材料メーカーや精密測定機メーカーの立ち上げにも関わり、現在はデジタル加工サービスを提供する米企業Proto Labs(プロトラブズ)日本法人の社長を務める。
⇒プロトラブズのWebサイト
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