東芝は2022年2月8日に開催した投資家向け説明会の中で、今後独立分社化を進める予定の、エネルギーやインフラ関連事業をまとめたインフラサービスカンパニーと、半導体やHDDなどデバイス系事業をまとめたデバイスカンパニーの事業戦略について発表した。
東芝は2022年2月8日に開催した投資家向け説明会の中で、今後独立分社化を進める予定の、エネルギーやインフラ関連事業をまとめたインフラサービスカンパニー(以下、インフラサービスCo.)と、半導体やHDDなどデバイス系事業をまとめたデバイスカンパニー(以下、デバイスCo.)の事業戦略について発表した。
インフラサービスCo.はこれまで東芝が手掛けてきた既存事業の内、原子力/火力/水力発電システムやグリッド事業、再生可能エネルギーなどの「エネルギーシステムソリューション」、公共インフラや上下水道ソリューション、物流ソリューションなどの「インフラシステムソリューション」、インフラ設備や工場向けのITソリューションや量子暗号通信技術などの「デジタルソリューション」、リチウムイオン二次電池「SCiB」などの電池事業からなる合計4セグメントで構成されている。
太陽光発電や水素エネルギーなどを含む電力分野、産業用モーターや産業用コンピュータなどを含む製造分野、上下水道システムや鉄道システムを含むインフラ分野、車載用電池などモビリティ分野、受変電設備などのビルデータセンター分野で、これまで東芝が培ってきた実績や顧客基盤を生かしたインフラサービスを提供していくとしている。
説明会では、インフラサービスCo.における2030年度までの中期計画について発表した。同社は2021年度の売上高見込みを1兆5200億円、営業利益は540億円としており、これを2030年度までに売上高では2兆5000億円、営業利益は2500億円に成長させる計画だ。2025年までは年平均5.3%の売上高成長を目指し、2025年以降は再生可能エネルギーやエネルギーマネジメントなどのエネルギーシステムソリューションの需要が高まるとして年平均6%の成長を見込んでいる。
成長に向けた投資については、カーボンニュートラル対応やリチウムイオン二次電池「SCiB」などの増産に向けた設備投資費として4000億円、予測最適化技術や気象データ解析技術、IoT(モノのインターネット)基盤の研究開発費として3900億円、再生可能エネルギー発電所の開発、運用、転売事業モデルへのマイナー出資などの投融資に1240億円と、2021年から2025年までに合計9140億円の投資を計画している。2016年度から2020年度までの投資総額は6310億円であり、これの約1.5倍に当たる金額を今後投資する予定ということになる。
東芝 代表執行役副社長 畠澤守氏は、インフラサービスCo.が今後実施する経営変革のための施策群について説明した。
まず、新事業創出のための組織改革に取り組む。従来の垂直統合型の組織から、既存事業の強みとデジタル技術を活用した事業横断型、ソリューション提案型の組織への転換を目指す。このために事業部門には「インフラサービス事業推進センター(仮称)」、R&D部門には「インフラサービス共創センター(同)」という横断型組織をそれぞれ設置する。
インフラサービス事業推進センターにおいては、技術シーズやビジネス化アイデア、人材などのリソースに基づいて展開を進める他、社外のスタートアップなどとの連携も視野に入れた事業開発を進める。インフラサービス共創センターでは事業目線でのR&Dリソースの振り分けを行う。
また、これに応じて営業体制も、各事業部門の顧客資産やソリューション、ノウハウを統合し、顧客課題の解決方法を提案できる事業横断型のソリューション提案型営業に転換するとした。
事業横断型体制への転換を進めるため、社内の「ITデジタル化投資」も加速する。次期基幹システムの導入と共に、設計や製造部門などのデジタル化することで、経営情報の統合化、見える化も進める。畠澤氏は「これまでビジネスプロセスに関わるIT投資は、現場や事業部任せにしており、このために短期的な収益を優先してIT導入が遅れていた面があった。経営変革の一環として、デジタル化を通じた事業の足腰の立て直しにしっかり取り組みたい」と語った。加えて、既存事業の枠を超えたソリューション提案のために、AI(人工知能)分野での専門技術人材の拡充も進める。
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