なお、医薬品と医療機器を組み合わせたコンビネーション製品については、欧州の場合、本連載第50回で触れたように、域内統一ルールの下に医薬品ライフサイクルを監視してきた欧州医薬品庁(EMA)が、「医薬品−機器コンビネーションのための品質要求事項」(2022年1月1日発効、関連情報)を策定し、各国の医療機器規制当局と連携する形態を採用している。EMAは、コンビネーション製品を、「統合型」(単一の統合型製品を構成する医薬品および機器)と、「同梱型」(同一パッケージに別のアイテムが含まれている医薬品および機器)に分類している。
これに対してFDAは、2022年1月28日、「コンビネーション製品向け市販前パスウェイ原則:業界およびFDAスタッフ向けガイダンス」(関連情報)を公表し、コンビネーション製品およびその市販前申請方法について、以下のように分類している。
FDAは、本連載第39回で取り上げたDe Novo分類申請や、第67回で取り上げた画期的機器(Breakthrough Devices)プログラム、STeP(医療機器向けのより安全な技術プログラム)など、さまざまな医療機器イノベーション推進策を展開している。今後、コンビネーション製品の新規開発を促進するためには、医療機器だけでなく、医薬品や生物製剤の薬事にも精通した人材の確保・育成が急務となる。
FDAスタッフの人的資源管理に関しては、米国会計検査院(GAO)が、2022年1月17日、「FDAの労働力−医療製品スタッフが現在および将来のニーズを満たすことを保証するために組織全体に渡る人員計画が必要とされる」(関連情報)と題する報告書を公表している。その中でGAOは、FDAの組織全体に渡って人的資源の取り組みを調整する戦略的人員計画や、人的資源戦略の有効性を評価するパフォーマンス評価体制がなかった点を問題視している。
米国では、証券取引委員会(SEC)が、2020年11月9日、株式公開企業に対して人的資本に関する情報開示の強化を求める「Regulation S-K」改定版(関連情報)を施行して以降、機関投資家を中心に、イノベーション戦略の中核となる戦略的要員計画やパフォーマンス評価指標への関心が高まっている。GAOの報告書は、その影響が政府機関の情報開示にも及んでいる現状を浮き彫りにしている。日本国内でも、米国内の株式市場に上場する企業を中心に、人的資本マネジメントに関わる「ISO 30414」への関心が高まりつつあるので、医療機器企業も注視する必要があろう。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所、グロバルヘルスイニシャチブ(GHI)等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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