注目される2022年上半期EU議長国フランスのデジタルヘルス戦略:海外医療技術トレンド(79)(1/3 ページ)
前回は、欧州NIS指令2の最新動向を紹介したが、同時に欧州各国レベルでは、さまざまなデジタルヘルス・イノベーション施策が進行している。今回はフランスを取り上げる。
前回は、欧州NIS指令2の最新動向を取り上げたが、同時に欧州各国レベルでは、さまざまなデジタルヘルス・イノベーション施策が進行している。今回はフランスを取り上げる。
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欧州連合(EU)には、任期6カ月の輪番制でEU理事会を議長国が取りまとめる仕組みがある。デジタルヘルス施策の観点からみると、本連載第30回で取り上げた「デジタルヘルス社会(DHS)宣言」(関連情報)を提唱した2017年下半期議長国エストニアや、第70回で取り上げた「欧州保健データスペース(EHDS)」(関連情報)を提唱した2020年下半期議長国ドイツなど、各議長国のアドボカシー活動が重要な役割を果たしてきた。
そして、2022年上半期においてEU理事会議長国を担うのがフランスである(関連情報)。フランスは、ドイツ前首相のアンゲラ・メルケル氏の政界引退直後の時期のEUの調整役となると同時に、2023年ラグビーワールドカップ大会や2024年パリオリンピック・パラリンピック大会など、ポストコロナ時代の国際的なビッグイベントのホスト国となっている。フランスのデジタルヘルス関連政策を紹介する。
2018年1月4日、フランス連帯・保健省は、「2018〜2022年国家健康戦略」(関連情報、PDF)を発表した。本戦略は、フランス公衆衛生高等評議会の分析や世界保健機関(WHO)の原則に基づいて、フランスの医療政策のフレームワークを提示したものであり、以下のような内容になっている。
- 優先順位1:あらゆる生活環境において、予防を含む生涯の健康増進政策を展開する
- 健康なライフスタイルの推進
- 健康な食事と定期的な運動を推進する
- 嗜癖行動をやめさせる
- 危険運転に関連するリスクを逓減する
- 性の健康
- 高齢者の自律性の損失
- 健康な生活と職場の環境
- 環境ハザード
- 免疫への投資
- 抗生物質の有効性の保護
- 慢性疾患の検知、特定、治療
- 優先順位2:健康へのアクセス面における社会的・地域的格差への取り組み
- 社会・経済的障壁の除去
- 個人責任分の費用の抑制
- 脆弱な個人による健康サービスへのアクセスの支援
- 職業・社会的排除
- 国全体の医療へのアクセスの保証
- 改善された医療へのアクセスの提供による地域ニーズの充足
- デジタル技術利用の一般化
- フィールドに従事する医療専門家に対する信頼
- 優先順位3:健康ケースマネジメントの全ステージにおける品質、安全性、妥当性の保証
- 地域的医療規定の変革
- 個人の経路の品質や継続性を保証する一次医療の構造化
- 制度的規定の構造化
- 障がい者・高齢者向け医療へのアクセスの向上
- ケアの継続性の保証
- 品質や妥当性の文化の構築
- ユーザーの関与を通した医療の品質・安全性の向上
- 処方、検査、入院の妥当性の向上
- 新興リスクを調整するための保健システムの適応
- 医薬品の適正使用の促進とジェリック版の開発
- われわれのためにケアする人への配慮
- 適切な内部トレーニングの実施と特別なスキルの開発
- 作業中の保健専門家の生活の質の向上
- 優先順位4:ユーザーの役割を再確認することによって保健システム変革の新境地を開拓する
- 研究とイノベーションの支援
- 知識の拡大、普及、適用
- 医療・技術イノベーションの支援
- 革新的な組織の興隆と配分の促進
- デジタルイノベーションの押し上げ
- 革新的な治療へのアクセスの保証
- 医療システムのユーザーの役割の再確認
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