株式売却も日立との技術連携深める日立建機、DX基盤の構築で国内営業の革新へ製造業がサービス業となる日(1/2 ページ)

日立建機と日立製作所は、日立建機がグローバルで展開する事業のDXを加速するための「DX基盤」を構築したと発表。その活用の第1弾となるのが、日立建機傘下で国内の建設機械の販売や部品・サービス事業などを担う日立建機日本の販売、サービス、レンタル、中古車の各担当者を対象に運用を始める「営業支援アプリ」である。

» 2022年01月21日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 日立建機と日立製作所(以下、日立)は2022年1月20日、日立建機がグローバルで展開する事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速するための「DX基盤」を構築したと発表した。このDX基盤活用の第1弾となるのが、日立建機傘下で国内の建設機械の販売や部品・サービス事業などを担う日立建機日本の販売、サービス、レンタル、中古車の各担当者(全国243拠点の約1000人)を対象に運用を始める「営業支援アプリ」である。日立建機は、国内におけるこの営業支援アプリの運用知見と新たに構築したDX基盤を生かし、売上高の過半を占める海外市場、特に2022年3月から独自の事業展開を立ち上げる北米市場の業績拡大につなげたい考えだ。日立も、日立建機との協創活動に基づくDX基盤をデジタルソリューション群「Lumada」の一つとして横展開していく方針である。

 日立建機と日立は、今回のDX基盤構築の以前からデジタル関連の技術連携を重ねてきた。建設機械に装着したセンサーのデータを収集して、稼働状況の把握と遠隔監視を行う「Global e-Service」や、それらのデータを活用して機械の効率的な保守と運用をサポートするソリューション「ConSite」は技術連携の成果となっている。そしてConSiteは、Lumadaのソリューションの一つにもなっている。

 日立建機 DX推進本部 副本部長の桃木典子氏は「今回のDX基盤の構築もLumada関連の協創活動の一環になる。当社はグローバル展開を重視する中で、さまざまなシステムが事業や地域ごとに散在する状態になっている。今回の営業支援アプリのようなデジタルを活用した取り組みを進める際に、これらのシステムから個別に情報を取ったりしていると時間と手間がかかって大変だ。そこで、アジャイル開発、複数システム活用、機能拡張、海外展開などを容易に実現するために開発したのがDX基盤だ」と語る。

日立建機の「DX基盤」の概念図 日立建機の「DX基盤」の概念図[クリックで拡大] 出所:日立建機

営業支援アプリでクイックレスポンスとRSSU提案を実現

 DX基盤活用の第1弾となる営業支援アプリは、日立建機の国内営業を担う日立建機日本の顧客接点改革を進めるための機能が備えられている。日立建機 DX推進本部 DX改革統括部 DX業務改革部 改革推進グループ 部長代理の阿部聡司氏は「期待される効果となるのが、クイックレスポンスとRSSU提案だ」と説明する。

営業支援アプリで期待されるクイックレスポンスとRSSU提案 営業支援アプリで期待されるクイックレスポンスとRSSU提案[クリックで拡大] 出所:日立建機

 営業支援アプリはタブレット端末(iPad)向けのアプリになっており、タッチパネルを使って、顧客の保有機械の稼働率や稼働時間、購入・レンタル・修理などの取引情報やメンテナンス計画、新車・中古車・レンタル車の在庫情報などをまとめて閲覧できる。さらに、これらのデータを用いたAI(人工知能)コンサルティング機能も備えており、顧客に最適な提案内容を複数パターン、瞬時に表示することが可能だ。「これまで出先でこれらの情報にアクセスしようとすれば、VPNに接続するなどの手間がかかることなどもあり、素早く確認できるとはいえなかった。営業支援アプリは、顧客との会話に必要な情報を集約して素早く閲覧できる上に、AIコンサルティングによる適切な提案も行える。営業活動でよく見られる『持ち帰ります』をなくせるので、まさにクイックレスポンスといえる」(阿部氏)。

営業支援アプリの使用イメージ 営業支援アプリの使用イメージ。その場で顧客にさまざまな提案を提示し「持ち帰ります」をなくす[クリックで拡大] 出所:日立建機

 そして、営業支援アプリの導入で期待されるもう1つの効果のRSSU提案とは、レンタル(Rental)、新車販売(Sales)、サービス(Service)、中古車(Used)を、顧客の保有機械の状況に合わせて適切に提案することだ。これまでは、営業担当の知見があまり深くない分野の提案をその場で行えなかったりしたが、営業支援アプリの活用でそういった問題を解消できるようになる。日立建機日本の場合、レンタル部門が別会社だった経緯もあり、営業支援アプリによるRSSU提案への期待は大きい。

 現在、日立建機日本の担当者約350人による営業支援アプリのβテストを行っているが、おおむね好評で、引き合いの追加や新規購入などにつながっている事例も出てきているという。

 営業支援アプリの正式導入は2022年度からだが、国内での運用知見を蓄積しながら、海外向けに各国・地域の事情に合ったアプリやツールの開発も進めていく。「クラウドベースのDX基盤は海外展開も視野に入れたものだ。国内での運用知見をベースに海外と議論を重ね、デザイン思考も活用して展開を広げていきたい」(桃木氏)という。

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