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» 2021年12月16日 06時30分 公開

キヤノンの320万画素SPADセンサーが9年ぶりの快挙、独自画素構造に2つの工夫組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

キヤノンが、暗所でも高感度に撮像が可能なSPADセンサーで、フルHD(約207万画素)を超えて「世界最高」(同社)となる320万画素を達成したと発表。従来発表の100万画素SPADセンサーから3倍以上の高画素化を実現するとともに、カラーフィルターを用いたカラー撮影も可能であり、センサーサイズも13.2×9.9mmと小型に抑えた。

[朴尚洙,MONOist]
キヤノンが開発した320万画素SPADセンサー(プロトタイプ) キヤノンが開発した320万画素SPADセンサー(プロトタイプ)[クリックで拡大] 出所:キヤノン

 キヤノンは2021年12月15日、暗所でも高感度に撮像が可能なSPAD(Single Photon Avalanche Diode)センサーで、フルHD(約207万画素)を超えて「世界最高」(同社)となる320万画素を達成したと発表した。2020年6月発表の100万画素のSPADセンサーから3倍以上の高画素化を実現するとともに、カラーフィルターを用いたカラー撮影も可能であり、センサーサイズも13.2×9.9mmと小型に抑えた。同社は2022年後半から、自社製セキュリティ用ネットワークカメラに搭載するため自社工場での生産を開始する方針である。

 今回の開発成果は、半導体や電子デバイスに関する世界最大規模の国際会議の一つである「IEDM(International Electron Devices Meeting) 2021」の「Late News Papers」に採択されたことも大きなトピックとなっている。IEDMでは例年、全体で数百件の論文発表が行われるが、Late News Papersに選ばれるのは最先端技術の成果のうち数件にとどまる。国内企業の発表がLate News Papersに採択されたのは2012年のルネサス エレクトロニクス以来9年ぶりで、今回のIEDM 2021のLate News Papersはキヤノンの320万画素SPADセンサーだけだった。

カラー画像の撮影事例を示す狙い

 開発した320万画素SPADセンサーを搭載する試作カメラを用いた撮影事例も公開した。まず、通常の照度の室内環境下で、フルHDを超える320万画素の高解像度を生かしたカラー画像の撮影ができることを確認した。高感度を特徴とするSPADセンサーは、感度低下の一因になるカラーフィルターの適用が必要なカラー画像の撮影が行われることはあまりない。今回公開したカラー画像は、320万画素SPADセンサーが高画素化と高感度を両立していることを強く示す狙いがある。

320万画素SPADセンサーで撮影したカラー画像 320万画素SPADセンサーで撮影したカラー画像。RGBカラーフィルターを用いた[クリックで拡大] 出所:キヤノン

 また、高感度を示す事例として、星の出ていない闇夜(照度で0.007ルクス程度)よりも暗い0.002ルクスの条件下の画像と、実験室で人工的に作り出した暗室で肉眼では周囲が認識できないほど真っ暗な0.0003ルクスの条件下の画像も公開した。0.002ルクスの条件下の画像は、背景にある解像パターンに加え、動きのある時計の針やメトロノームにつけた濃淡のあるチャートも含め、鮮明な画像を得られており、0.0003ルクスの条件下の画像も被写体が認識可能としている。

0.002ルクスの条件下の画像0.0003ルクスの条件下の画像 0.002ルクスの条件下の画像(左)と0.0003ルクスの条件下の画像(右)[クリックで拡大] 出所:キヤノン

 なお、これらの画像は、一般的な動画撮影で使用されている30分の1秒の速度で撮影した動画から静止画を切り出したものとなる。

高感度が特徴のSPADセンサー、LiDARなど高精度な距離測定でも期待

 SPADセンサーは、画素となるフォトダイオードに入ってきた光の粒子(光子、フォトン)1つ1つ数える仕組み(フォトンカウンティング)を持つイメージセンサーである。画素に光子が入るとすぐに電荷に変換され、その電子があたかも雪崩(アバランシェ)のように1つの光子をきっかけに倍増し大きな電気信号として取り出せる。このため、画素にたまった光子の量を測定する仕組み(電荷集積)を用いるCMOSセンサーとは異なり、出力される電気信号にノイズが入らないため、暗所でもわずかな光を検出してノイズの影響を受けずに被写体を鮮明に撮影できる、超高感度が大きな特徴となる。

CMOSセンサー(左)とSPADセンサー(右)の画素構造比較 CMOSセンサー(左)とSPADセンサー(右)の画素構造比較[クリックで拡大] 出所:キヤノン

 また、SPADセンサーは、極めて高い時間分解能を持ち、高速の情報処理を実現できる特性も有している。この特性を生かして、対象物に光を当て反射光が戻ってくるまでの時間を計測して距離を算出するToF(Time-of-Flight)方式による高精度な距離測定ができることも知られており、自動運転車などに搭載されるLiDAR(ライダー、Light Detection and Ranging)などの用途でも期待されている。

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