製造や物流など業界特化のユースケース創出加速、シスコの3カ年成長戦略製造マネジメントニュース

シスコシステムズは2021年11月4日、2022年度における同社の事業戦略説明会を開催し、2021年度の事業成果と、2022年度から2024年度までの3カ年成長戦略を発表した。

» 2021年11月18日 09時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 シスコシステムズは2021年11月4日、2022年度における同社の事業戦略説明会を開催し、2021年度の事業成果と、2022〜2024年度までの3カ年成長戦略を発表した。2021年度についてはコロナ禍による事業環境の変化で、ソフトウェアの売り上げがハードウェアを上回ったという。

2020年に5Gショーケースをオープン

 シスコシステムズ 代表執行役員 社長の中川いち朗氏は2021年度を振り返り、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってリモートワークが普及した他、デジタル庁の設立などで企業活動におけるデジタル化が加速するなど、幾つかの市場変化があったと語った。

 シスコシステムズにおける2021年度の取り組みとしては、2020年11月に5Gネットワークを用いた実証環境を提供する「5Gショーケース」を本社オフィス内にオープンしたことを取り上げた。中川氏は「当社は5Gモバイルネットワークとエンタープライズネットワークの双方において豊富な実績を持つ、通信業界唯一の企業である。このノウハウを生かして、5Gのユースケースを創造する環境づくりを提供する」と意気込みを見せた。

 また、ニューノーマルによる企業の積極的なデジタル化は、同社のビジネスポートフォリオにも影響を与えたという。2021年度の総売上に対するソフトウェア売り上げの割合は約30%で、その内、約80%をサブスクリプションサービスの売り上げが占めている。総売上に対するソフトウェアとサービスの売り上げは全体の半分以上を占めており、ハードウェアの売り上げを超えた。ソフトウェアの売り上げはグローバルで150億ドルを超えており、同領域を手掛ける企業の中では世界第6位の規模となるという。

シスコシステムズの2021年度実績[クリックして拡大] 出所:シスコシステムズ

4つの重点領域に注力

 シスコシステムズは2021年度の重点戦略として、企業の働き方改革やセキュリティ対策、IoT(モノのインターネット)ネットワーク、クラウド基盤導入など「日本企業のデジタル変革」、教育や医療、自治体分野での「日本社会のデジタイゼーション」、カスタマーサクセスやSMB分野での「営業/サービスモデルの変革」、NTTコミュニケーションズやNECなど「パートナーとの価値共創」の4領域を掲げ、実現に向けた取り組みを進めてきた。

 これらの成果としては、例えば、カスタマーサクセス分野ではデンソーにおいて、ネットワーク管理を効率化する「Cisco DNA Center」を導入することで、150拠点で約400台の工場内ネットワーク機器の自動化とデジタル化を実現した。

 中川氏は、シスコシステムズの2022〜2024年度までの3カ年戦略においても、これらの重点領域に引き続き取り組むとした。

3カ年成長戦略の概要[クリックして拡大] 出所:シスコシステムズ

 日本企業のデジタル変革においては、製造や金融、流通サービス、公共サービスなど業種別に異なるニーズに合わせたユースケース創出に取り組むため、業界特化型の専任チームを立ち上げる。

 日本社会のデジタイゼーションについては、国や地域に特化したデジタル化支援「CDA 2.0(カントリーデジタイゼーションアクセラレーション)」を展開する。これまで国内で取り組んできた製造業やスマートシティ、電子政府といった領域に加えて、脱炭素、スマートモビリティ、サプライチェーンのデジタル化や無人店舗の普及など新領域においても、専任のデジタル化支援チームを組織して取り組んでいくという。

 この他、営業/サービスモデルの変革においては、システム導入から導入後の定着や最適化提案を含めた包括的な支援サービスを展開する予定だ。パートナーとの価値共創においては、マネージドサービス領域で専門チームを組織して取り組みを推進するという。

 中川氏は「2021年1月に新しく社長に就任したが、コロナ禍ということもあり、周囲からは『大変な時に社長になったね』と言われた。だが、私自身はむしろ困難の中にチャンスがあると思っている。当社は今後も、コロナ禍で広まったハイブリッドな働き方をはじめとする、社会のデジタル変革を支援し、貢献していきたいと考えている」と語った。

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