IE(Industrial Engineering)における生産の3要素の“IE的視点”は、労働力、原材料、機械設備のうち、機械設備については生産効率向上にマッチした計画配置と、配置した設備の能力を最高に発揮しようと努力を払うことが原価低減に通ずるものであるという考え方です。従って、機械設備の計画や選択、使用方法、保全体制、補修と改造、更新計画などについての合理的な取り扱いが要求されることになれます。
設備管理の重要性が特に注目されるようになってきていますが、初期の設備管理は、計画配置と故障が生じた後いかに速やかに補修できるかということに重点が置かれていました。しかし、計画配置と、いかにして故障を起こさないようにするか、いかにして最も効率の良い状態で設備を稼働するかということに意識を向けていかなければなりません。
一般的な手順としては、製品計画に基づいて販売予測を行い、その生産日程計画を立案して、次に設備計画を立案します。この結果により人員計画などを立てることになります。このようにして設備を配置していますが、設備が常に最高の能率を発揮するように保ってこそ、初めて作業標準(作業標準書)は守られ、作業は標準時間(ST:Standard Time)通りに遂行され、生産は計画通りに進行し、工場の生産は計画と一致するということになります。もし、設備管理が不完全な場合には、これらにムダとムリが生じてしまい、生産は計画通りに進行しないということになってしまいます。
設備管理を効果あるように行うためには、工場に最も適した組織を作ることもまた大切です。企業の規模にもよりますが、理想的には工場に設備課あるいは設備管理担当者を配置して、設備使用の立場と並列的立場にすることが望ましいとされています。しかも、関係する業務は広く、工場全体に及んでいますので、他の部門と協調して進めることが必要となります。
設備課あるいは設備管理担当者を配置することによって、治工具などが保管されて、部門ごとに管理するよりもムダが省けます。しかし、これらの担当者は各現場へのサービス精神に徹することが必要で、これに欠けると現場と遊離してしまい、独りよがりの管理となってしまいます。設備課の持つべき機能は、企業の規模や業務内容などによって異なりますが、一般には次の項目が挙げられます。
企業によっては、これらの一部を似通った作業内容として他の組織で行っているところもあります。しかし、この運用を誤ると、設備管理を行うという機能が軽視されてしまい、十分にその効果を発揮できなくなってしまうこともありますので注意する必要があります。設備管理に関係すると思われる社内の業務やルールを見直して再構築することも重要ではないでしょうか。
設備管理業務の遂行に伴い、必要な事務手続および統計資料などを整備しておく必要があります。例えば、機械設備の分類と記号の付け方を規定しておくことが必要です。そして個々の機械設備に記号や番号を表示します。設備台帳を作り整備しておくなどの作業も必要になってきます。これらは、個々の企業それぞれの実情に即した最も便利な方法を工夫して規定しておけばいいと思います。これらは日常業務として取り扱いますが、このような基本的なことが十分に整備されていなければ、いくら合理的な手法を適用しようとしても砂上の楼閣に終わる事例が多くあります。
設備を管理しようとする場合、どのように管理すればいいかの目標を決めなければなりません。つまり、機械設備のうち管理の重点を置くものを選定することが必要になってきます。この場合には、品質管理の用語に「Vital Few & Trivial Many(重要な少数と、取るに足りない多数)」というのがあります。“Vital Few”は経営成果に重大な影響を与える要因(Critical to Quality)になりますので、当然この項目を対象とする管理となることは言うまでもありません。また、機械設備については、管理点(Control Point)として何を選ぶかということがあります。一般に設備管理を行う場合の管理点としては、製品の品質、コスト、納期、生産性、安全性、環境などが考えられます。管理点を選択したら、管理サイクルを確立するわけですが、管理を進めていくためには次の順序で行います。
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生産活動を維持・向上をさせていく活動の重要性が高まると同時に、設備管理の位置付けが非常に高まっています。設備管理の目的は、生産活動の目的である製品の品質、原価、納期などを生産設備の視点から捉えて、生産性を向上させることにあります。機械設備の単なる故障の修理、部品の取り換えなどによって生産を維持していくだけではなく、生産設備の機能を最大限に発揮させて、会社の利益につながるような設備の導入から維持・管理までを確実に行っていくことが大切です。
以上のように、設備管理の目的は、一言でいえば、あらゆるムダの排除を行って原価を下げて、企業利益の最大化を継続して図っていくことにあります。このことをまずは理解していただければと思います。
MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)
日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。
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