体内で放射線がん治療をするための材料を高効率で製造する技術を確立：医療機器ニュース

日立製作所、東北大学、京都大学は、放射線がん治療法の1つであるアルファ線内用療法に必要なアクチニウム225を、高効率、高品質で製造する技術を開発した。体内に広く分散したがんにも有効なアルファ線内用療法の早期実用化、普及に貢献する。

[MONOist]

　日立製作所は2021年10月18日、放射線がん治療法の1つであるアルファ線内用療法に必要なアクチニウム225を、高効率、高品質で製造する技術を開発したと発表した。東北大学、京都大学との共同研究による成果だ。

　アルファ線内用療法は、がん細胞を破壊するアルファ線を放出する物質とがん細胞に選択的に取り込まれる薬剤を組み合わせたアルファ線治療薬を体内に投与し、体の中からがん細胞を狙い打ちして攻撃する新しい治療法だ。従来の放射線治療法では治療が難しかった、体内に広く分散したがんに対して有効と考えられている。

アルファ線内用療法の原理［クリックで拡大］ 出所：日立製作所

　今回、電子線形加速器を用いて、原料のラジウム226に透過力が高い制動放射線を照射することで、アクチニウム225を製造する技術を開発した。分離できない不純物は生成しないため、高品質なアクチニウム225を高効率で製造できる。

電子線形加速器によるアクチニウム225の製造方法［クリックで拡大］ 出所：日立製作所

　従来のアクチニウム225製造法では、年間の製造量が63GBq（ギガベクレル）と少量だったが、開発した技術が実用化すれば、同量を1日で製造できるようになる。

　アクチニウム225を用いた治療法は高い効果が認められており、研究が進められている。しかし、これまでアクチニウム225の製造には、取り扱いが困難な核物質トリウム229を原料とする製造法しか確立されておらず、アルファ線内用療法が普及するために十分な量を確保できないことが課題となっていた。