山口大学、徳島大学、九州大学は共同で、蛍光生体イメージングにより、体外からがん組織を深部まで観察できる近赤外蛍光、有機シリカナノ粒子を開発した。
山口大学は2020年8月26日、蛍光生体イメージングにより、体外からがん組織を深部まで観察できる近赤外蛍光、有機シリカナノ粒子を開発したと発表した。山口大学大学院医学系研究科 教授の中村教泰氏らの研究グループと徳島大学、九州大学の共同研究による成果だ。
開発した近赤外蛍光、有機シリカナノ粒子は、チオール有機シリカ化合物とシアニン系近赤外色素IR-820を用いて作製した。広範囲の近赤外領域で蛍光を発生するだけでなく、アップコンバージョンと呼ばれる励起光より高エネルギーの光が発生する特性も発見した。また、ナノ粒子ががん組織に堆積し、蛍光イメージングで観察できることが確認された。
皮下異種移植腫瘍マウスにおいて近赤外蛍光、有機シリカナノ粒子による蛍光イメージングをしたところ、近赤外領域の複数の励起波長を使用することで深度依存的に観察できた。この観察は4カ月におよび、がん組織の消退にいたるまで蛍光が確認された。
次に、マウス生体内で標識した細胞の蛍光生体イメージングを行ったところ、マクロファージが異種細胞に対する拒絶反応に寄与した様子を観察できた。ナノ粒子の静脈投与により、肝臓と脾臓に存在するマクロファージを生体内で標識した後、右腰部の皮下に異種細胞を移植すると、約2週間後に右腰部に蛍光を観察した。さらに皮膚をはがして観察したところ、異種組織に強い蛍光を確認した。
蛍光生体イメージング診断法は、がんの早期発見や術中観察など医療への活用が期待されており、アメリカでは今回開発したナノ粒子と同様の近赤外蛍光シリカナノ粒子をがん造影剤とするヒト臨床治験が進められている。
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