こうした生産設備は集中管理室で状態を常時監視し、電流や電圧、振動、圧力、温度などのデータの推移を基に異常の兆候がないか見守る。予防保全は29種類の設備に導入しており、8600種類を超える測定データから独自開発の診断ロジックに基づいて診断している。
設備に問題が発生した場合は、高技能者が待機する集中管理室と現場の保全員がやりとりしながら復旧させる。現場の保全員はタブレットPCとウェアラブルカメラ、集中管理室と通話するための骨伝導イヤフォン付きヘッドセットを身に着けて、故障が発生した設備に向かう。高技能者は作業の指示や注意事項などを随時伝え、タブレットPCで作業内容を提示するなどしながら復旧を支援する。
生産における車両1台当たりのCO2排出量は、2005年から2019年にかけて30%削減した。2019年時点の生産時のCO2排出量は1台当たり0.514トン、年間で220万トンだ。これをエネルギー種別でみると、ガスや燃料由来が29%、電力由来が71%、地域別では日本が35%、中国が19%、北米が21%、欧州が6%となっている。
2005〜2019年のCO2排出量削減は、エネルギーロスを減らすための地道な積み重ねによるところが大きい。「これまではイノベーションというよりも、ムダをなくし、効果的な設備更新を実施するなど積み重ねと社内からの提案で排出量を削減してきた。ただ、その延長で排出削減を伸ばしていくのは難しい。だからこそ、新技術を取り入れる必要があった」と坂本氏は説明した。一新した塗装ラインも使用エネルギーの大幅削減に貢献する。
工場のカーボンニュートラル達成に向けた代替燃料を使った発電では、車載用に開発を進めてきた固体酸化物型燃料電池(SOFC)を定置用に応用し、活用する。SOFCは酸素イオンが電解質内を移動して発電。バイオエタノールの他、水素や人工メタンが燃料として使用できる。2022年から出力5kWまでの小規模なトライアルを開始し、2024〜2025年に出力30kW以上にスケールアップして実証を行う。
また、2050年のカーボンニュートラル達成に向けては、コンプレッサーを使用するエア工具を電動工具に置き換えるとともに、鉄の鋳造をキュポラから高周波炉に、アルミ溶解炉のレードル加熱はガス直火から遠赤ヒーターに入れ替えて電化を進める。炉の電化は技術面のハードルが大きいが、技術開発を進めている。
2030年までに一部の設備やツールの電化を実施するとともに、再生可能エネルギーや代替燃料による電力の適用を拡大する。2030年以降は、工場の設備の電化や、再エネと代替燃料による電力を全面的に適用していく。
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