新しい生産技術は、アリアの生産に当たって栃木工場の一部で取り入れた。既存の生産車種のラインは残されている。
既存の建屋に導入した生産設備などもある一方で、塗装ラインは建屋から一新した。従来のように水を使用せずに塗料ミストを回収するため、塗装ブースだけでなく空調も含めて従来とは異なる設備を導入したためだ。新たな塗装ラインでは、ボディーとバンパーの塗装や焼き付けを一体で行う。塗料ミストは粉末の石灰石で回収し、100%リユースする。従来のように塗装ブースの排気を水に通さないため、温度や湿度がコントロールされたブース内の空気を再利用できるようにした。
栃木工場に導入した新たな生産技術としては以下のようなものがある。生産を止めて建屋からつくり直すなど大きな変更が生じるため、今後、他の工場に下記の全てのシステムや工程を一斉に導入するのではなく、導入できるものから部分的に取り入れる。
パワートレインの一括搭載は、エンジン車とHEV、EVで生産ラインを分けずに1ラインで混流生産できるようにするための仕組みだ。現在、追浜工場でエンジン車とHEVの混流生産は実施しているが、EVを追加した場合はいずれかのパワートレインでしか組み付けない部品が発生し、組み付け工程が増えてしまう。こうしたパワートレインごとの組み付け工程の差を吸収するため、フロント/センター/リアで分割したパレットにそれぞれに必要な部品を搭載し、共通のベースのパレットに載せる流れとした。
3つのパレットを載せたベースのパレットに、ハンガーで吊り上げられて流れてきた車体を載せることであらゆる車種のアンダーフロアを1ラインで搭載できるようにしている。ハンガー上の車体の姿勢には微妙なズレがあるが、車体の位置をリアルタイムで計測し、パレットの位置を±0.05mmの精度で補正することで位置を合わせる。搭載後はロボットが自動でボルトを締め付ける。
既存モデルは、そのままの設計ではパワートレイン一括搭載システムで組み付けを行うことができない。車両のプラットフォーム変更などの機会に、一括搭載システムに合わせた構造に変更する必要がある。例えば、従来はボルトを斜めに締め付ける必要があったが、アリアはパワートレイン一括搭載システムでの組み付けを前提に真下からストレートに締め付けできるようにアンダーボディーを設計した。この他にも339件の構造要件が車両の設計に織り込まれている。
なお、システムに対応していない車両を生産するラインでも、パワートレイン一括搭載に近い仕組みを取り入れたい考えだ。従来は、作業者が重量物を載せたリフターの位置を合わせ、腰を曲げた状態で腕を上げる負荷の高い作業姿勢で組み付けを行う必要があった。生産車種によってはパワートレイン一括搭載システムの導入まで時間を要するが、作業負荷を軽減するコンセプトは取り入れていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.