日本のモノづくりの現状を示す「2021年版ものづくり白書」が2021年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2021年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第2回では「製造業のニューノーマル」の主軸として紹介されている「レジリエンス」「グリーン」「デジタル」という3つの視点について掘り下げる。
2021年5月に公開された「令和2年度ものづくり基盤技術の振興施策」(以下、2021年版ものづくり白書)を読み解く本連載。第1回では、2021年版ものづくり白書の「第1章日本のものづくり産業が直面する課題と展望」を中心に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響がどのように日本の製造業に及んでいるかを確認した。第2回ではポストコロナにおける「製造業のニューノーマル」の主軸として紹介されている「レジリエンス」「グリーン」「デジタル」という3つの視点について掘り下げている。
上記の3つの視点の中で「デジタル」に関しては、2020年に公開された「2020年版ものづくり白書」に引き続き、日本の製造業が将来的に生き残るために不可欠なツールと位置付けられている。しかし、製造事業者に限らず多くの企業においてデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みは「未着手」または「一部部門での実施」にとどまっており、十分に進んでいるとはいえない。
第3回となる本稿では、製造業のDXへの取り組みという視点から、現在デジタル化などの急速かつ広範な変化に直面する製造業がどのようにデジタル人材の確保や育成に取り組んでいるのかについて調査結果を基に見ていく。
2021年版ものづくり白書では、製造業を「デジタル技術活用企業」と「デジタル技術未活用企業」の2種類に分けて比較し考察している。
「デジタル技術活用企業」とは、モノづくりの工程や活動においてデジタル技術を「活用している」とした企業であり、全体の54.0%を占める。他方、「活用していない」とした企業が「デジタル技術未活用企業」であり、こちらは全体の23.3%となっている。デジタル技術活用企業はデジタル技術未活用企業のおよそ3倍であり、「活用を検討している」も合わせると、デジタル技術の活用に積極的な企業は7割を超えている(図1)。この結果から、製造業においてデジタル技術の導入や活用に関心が高まっていることが分かる。
製造業における経営課題については、デジタル技術活用企業、デジタル技術未活用企業ともに「人材育成・能力開発が進まない」がトップとなっている(図2)。このことから、デジタル技術活用の有無にかかわらず、モノづくり人材の育成や能力開発が、製造業において、大きな経営課題となっていることがうかがえる。
デジタル技術活用企業では、「生産管理」「製造」「受・発注管理、在庫管理」おいてデジタル技術を活用できる人材の配置が求められている(図3)。デジタル技術活用企業がデジタル技術を活用する理由や狙いが「在庫管理の効率化」「作業負担の軽減や作業効率の改善」「開発・製造等のリードタイムの削減」にあることから(図4)、デジタル技術活用企業は、デジタル技術を用いて業務効率化を実現することで労働者の負担軽減や無駄な作業の縮減などを図ろうとしていることが分かる。
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