ここまで、ITを含むデジタル技術を活用した課題解決や業務効率化を進めるためには、人材を確保し育成することが重要だということは確認できた。次はデジタル人材の確保と育成が進められない要因と、それを乗り越えるためのポイントについて確認していく。
デジタル技術を活用する上での課題については、デジタル技術活用企業、デジタル技術未活用企業ともに「デジタル技術導入にかかるノウハウ不足」「デジタル技術の活用にあたって先導的役割を果たすことのできる人材の不足」「デジタル技術導入にかかる予算の不足」を挙げている(図15)。
それではこれらの課題を乗り越えて、DXを推進する役割を担うのは誰なのだろうか。デジタル技術活用企業においては「経営トップ」がデジタル技術の導入や活用の先導的役割を果たしており、これに次いで「社内で特にデジタル技術に精通した社員」や「デジタル技術を利用・活用した部門のリーダー社員」が挙げられている(図16)。
一方で、先の質問で「デジタル技術導入にかかるノウハウの不足」を課題として挙げたデジタル技術活用企業に、デジタル技術の導入のノウハウに精通すべき社員層を質問したところ「デジタル技術を利用・活用した部門のリーダー社員」「工場長やデジタル技術を利用・活用した部門のトップ」が「経営トップ」を大きく上回っている(図17)。
このことから、製造業がデジタル化に着手するに当たっては、まず「経営トップ」がデジタル技術の活用の必要性を認識し、トップダウンの形でデジタル化を進めていくことが重要である。さらに、それを踏まえた上で、デジタル技術の導入を具体的に進める段階においては、経営トップよりも「現場の業務内容を熟知したリーダー社員」が細かなノウハウに精通し、中心となって進めていくことが重要となるという2段階の構造の重要性が推察される。
デジタル技術活用企業は「社員のデジタル技術活用促進に向けた意識改革」をデジタル技術の活用を進める重要な取り組みとして考えている傾向にある。デジタル技術の活用に当たっては、製造業で働く幅広い社員一人一人が、デジタル技術を活用する意識を持つことが重要だということが分かる。一方で、デジタル技術未活用企業では「会社が必要とするデジタル技術活用の要件の明確化」「経営層のデジタル技術活用に向けた理解の促進」といった導入以前の入口段階での取り組みが重要視されていることが分かる(図18)。
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