ルネサスのIoT・インフラ事業の遊撃部隊ともいえるSSTが、マスマーケットを目指すより多くのユーザーに向けて新たに開発したのが、2021年7月に発表したモジュール式開発プラットフォーム「クイックコネクトIoT」である。
クイックコネクトIoTは、ルネサスのマイコン開発ボードと、Digilentが規格化したインタフェース「Pmod」に対応するさまざまな小型モジュールを組み合わせることで、顧客の求めるIoT(モノのインターネット)製品の開発や試作を迅速かつ容易に行える。通信やセンサーのモジュールを入れ替えたり追加したりすることで、IoTシステムのラピッドプロトタイピングが可能になるのだ。
これまでもルネサスのマイコン開発ボードはPmodインタフェースを搭載しているが、クイックコネクトIoTの投入に合わせて、よりIoTシステムにおける使い勝手の良さを目指して、Digilentと共同で新たなPmodインタフェースとなる「タイプ6A」を規格化した。従来のPmodインタフェースは、GPIOに対応するタイプ1とタイプ1A、SPIに対応するタイプ2、SPIとGPIOに対応するタイプ2A、I2Cに対応するタイプ6などがあった。タイプ6Aは、I2CとGPIOに対応する。
今回のクイックコネクトIoTの発表では、タイプ6Aに準拠したPmodセンサーモジュール6種の投入を決めた。それぞれ、室内空気質、室外空気質、冷蔵庫内空気質、脈波/血中酸素飽和度/心拍、風速/水流、温湿度のセンシングに対応する。また、これらのセンサーモジュールはカスケード接続できるので、複数のセンサーを組み合わせた機能の開発も可能になる。もちろんこれら6種のセンサーモジュール以外にも、ルネサスが提供する通信用のPmodモジュールや、他社がリリースしているさまざまなPmodモジュールも利用可能だ。
今後、ルネサスのマイコン開発ボードは全て、タイプ6AのPmodインタフェースに対応する予定だ。従来のマイコン開発ボードについても、インターポーザーを介して接続できるので、Pmodセンサーモジュールはルネサス製であれば多くのマイコン開発ボードで活用できそうだ。
クイックコネクトIoTでは、ウイニングコンボと同様にソフトウェア開発の負荷を可能な限り低減するための仕組みも用意している。まず、新たに提供するタイプ6Aに準拠したPmodセンサーモジュールは検証済みのソフトウェアパッケージを提供する。具体的には、共通のソフトウェアAPIとHAL(Hardware Abstraction Layer)のコードを再定義してルネサスの統合開発環境である「e2 studio」に組み込んでおり、GUIを通してセンサーを選択し、後は数行のコードを書くだけでセンサーモジュールが利用可能になる。また、従来はソフトウェア開発の負荷だけでなくセンシングの品質が確保できないことも課題になっていたが、今回のソフトウェアパッケージはルネサスで検証済みなのでセンシング品質も安定する。
IoTシステムの開発では、クラウドとの連携も重要になるが、リアルタイムOS(RTOS)として「Amazon FreeRTOS」や「Microsoft Azure RTOS(旧ThreadX)」を利用すれば、容易にAWSやAzureとつなげることが可能になる。
迫間氏は「ウイニングコンボ、クイックコネクトIoTの他にも、製品開発の概念実証を行えるPoCキットも用意している。このPoCキットを、直感的なGUIによりリモートで操作できるオンライン評価環境の『Lab on the Cloud』も2021年1月にリリースした。コロナ禍でも製品開発に役立てられることから好評で、さらなら展開の拡大を進める方針だ。ルネサスのソリューションを活用した顧客による製品の早期市場投入に貢献できるよう、今後も取り組みを強化していきたい」と述べている。
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