東芝は、2021年度(2022年3月期)第1四半期(4〜6月期)の連結業績を発表するとともに、前代表執行役社長 CEOの車谷暢昭氏が2021年4月に辞任してから混迷した状況にある同社の経営体制の方向性について、現代表執行役社長 CEOの綱川智氏が説明した。
東芝は2021年8月12日、オンラインで会見を開き、2021年度(2022年3月期)第1四半期(4〜6月期)の連結業績を発表するとともに、前代表執行役社長 CEOの車谷暢昭氏が同年4月に辞任してから混迷した状況にある同社の経営体制の方向性について、現代表執行役社長 CEOの綱川智氏が説明した。
東芝では、2021年4月に車谷氏が電撃的な辞任を発表して以降、同年6月10日に発表された「第181期定時株主総会の運営に関する調査結果(以下、調査報告書)」が大きく影響し、6月25日の株主総会でそれまで取締役会議長を務めてきた永山治氏が取締役候補として否決され、綱川氏が暫定ながら取締役会議長を兼任する事態になるなど、経営体制が十全とはいえない状態にある。また、調査報告書では、投資家の自律的な行動を妨げるなど企業ガバナンスに大きな問題があったことも判明している。
会見で綱川氏は、現在の8人から成る新たな取締役体制の下で、戦略委員会、指名委員会、監査委員会、報酬委員会など新たに設けた各委員会が積極的に活動していることを説明。また、今回問題となった企業ガバナンスの改善に向け「調査報告書の指摘を真摯(しんし)に受け止めて」(同氏)、新たに設置したガバナンス強化委員会で「真因の究明」「責任の所在の明確化」「再発防止策の策定に向けた提言」を行うことを言明した。
なお、調査結果で指摘された企業ガバナンスの問題について綱川氏は「法令違反やコンプライアンス違反ではなく、投資家の行動を妨げるなどした企業ガバナンスの問題だと認識している。ガバナンス強化委員会では追加調査を行う予定だが、調査報告書の事実認定を再調査することを意図したものではない」と述べた。
現在の東芝の経営体制では、取締役会議長を暫定的に綱川氏が兼任していること、取締役のうち監査委員が3人と少ないことが大きな課題になっている。また、綱川氏が代表執行役社長 CEOに就任した際に示していた、CEOの後継者の選定も進める必要がある。これらの人事は取締役会の指名委員会が担っており、エグゼクティブ・サーチ会社などを決めて人選を進めているところだ。綱川氏は「まずは監査委員と取締役会議長の選定を進めていただき、臨時株主総会による承認を2021年末までに得たい。取締役会議長については、東芝の事業が多岐にわたることもありCEO経験者が望ましいと思っている」と説明する。
東芝は、車谷氏が推進してきた中期経営計画「東芝Nextプラン」のコンセプトを堅持しつつ、環境変化に応じた計画修正を図った「22〜24年中期計画」を2021年10月に発表する方針を表明している。現状の経営体制は暫定的ではあるものの、10月に22〜24年中期計画を発表する方針に変更はない。「執行部と取締役会の戦略委員会が密に連携しながら計画を策定している。それまでに新CEOを選定するのは難しいと思うが、中期計画は今後の成長に向けて不可欠だと考えている」(綱川氏)という。
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