高まるアフターマーケット領域の関心、BPMソフトウェア企業が見る国内製造業製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)

» 2021年08月06日 10時00分 公開
[池谷翼MONOist]
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アフターマーケット領域への関心が高まる

MONOist ペガジャパンの設立から10周年ですが、これまでの活動をどのように総括しますか。

福島氏 就任したばかりの私の目から見ても、グローバルに実績のあるBPMソリューションをはじめ、金融業界を中心に、多数の顧客が当社ソリューションになじみを持ってくれたと考えている。設立当初はペガシステムズの国内認知度を高めることから始めらなければならなかったが、10年の活動で国内でも多くの顧客に製品を利用してもらうことができた。今後は、これまで築いてきた顧客層に加えて、新規顧客層の拡大と新ソリューションの浸透を図る。

 一方で、AI(人工知能)などのテクノロジーの進展や、BPM以外のニーズ、例えばコールセンターやデジタルマーケティング、B2B2C領域での顧客エンゲージメント強化など新しいソリューションへのニーズが高まるという変化もあった。今後はこうした領域にも対応できるようにしていきたい。

MONOist 製造業に向けた展開はどのように考えていますか。

福島氏 繰り返しではあるが、当社のBPMソリューションは業種を問わずバックエンドプロセスの効率化を実現できる。このため、製造業においても他業種同様、この分野では変わらず役に立てると考えている。

 ただ、製造業固有の動向も存在する。注目しているのが、製品販売後のカスタマーサービスやメンテナンスといったアフターマーケット領域だ。販売代理店経由で製品を売ったらそれで終わり、という時代から、顧客エンゲージメント向上を目的としたサービスを展開して新たな収益を生む時代へと変わりつつある。同領域のデジタル化、効率化ニーズは今後盛り上がると予想している。

 AIやRPA(Robotic Process Automation)というテクノロジー導入に加えて、予見予知に基づく保守のニーズも高まっている。最近ではリコール対応などのワランティークレームへの関心も高い。こうした領域での先進的な対策が必要だ。

サイロ化は課題だが、デジタル化自体は進行中

MONOist 製造業のデジタル化について、現状をどのように見ていますか。

福島氏 “組織の壁”が変革を邪魔して、企業の全体最適化ではなく部署ごとの個別最適化、サイロ化が進む事例が多いように思う。今は大分状況が変わってきたが、CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)やCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)などの役職者が、米国や欧州と比べて権限を発揮しづらい面があった。

 また、米国や欧州との比較という観点で見ると、国内製造業では外資系企業より被雇用者が守られていることが多い。日本的な労使関係を否定するつもりはないが、時にはこれが変革の妨げになるケースもある。

 一方で、製造業全体のデジタル化は着実に進みつつある。クラウド化の重要性に対する意識も、現場レベルで高まっている。「アプリケーションやビジネスモデルを一から構築するのであれば、もうオンサイトではなくクラウド上で開発した方が早い」という意見を現場でよく聞く。DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に当たって、アジャイル志向で臨む姿勢が強まっている。

 ただ、DXのためのシステム開発を内製化するに当たって、リソース不足という現実に直面するケースもある。自社内で実行力と判断力を備えた人材を養うことも大事だ。

 もう1つ、ローコード/ノーコード開発への注目度も増している。社内プロセスの複雑さによっては開発に着手するまでの“前工程”に時間がかかりがちだが、これをアジャイルな形で進めることで作業を効率化できる。なお、ローコード/ノーコードツールの多くはデータ登録や入力などを効率化するものが多いが、当社の製品は理想的な業務プロセス実現に向けた業務設計を支援する点が特徴だ。製造業の顧客でも引き合いが高まっている。

MONOist これまでの主要顧客は金融業が中心とのことですが、製造業の業務プロセスなどの知見は蓄積されているのでしょうか。

福島氏 当社はグローバルに拠点を展開しており、国や地域による違いを熟知した専門知識集団が在籍している。例えば国内製造業であれば、日本企業の固有性などを理解したスタッフがサポートする。海外拠点を持つ製造業も多いが、もちろん各地域の地域性を考慮した支援が可能である。

MONOist 今後の展望についてご説明ください。

福島氏 アフターマーケット領域に関する相談を筆頭に、製造業から当社への問い合わせ自体がとても多くなっている。当然、当社の製品やソリューションを使ってもらうだけでなく、さらに満足度を高めてもらえるよう取り組みを進めるつもりだ。

 仕事環境のリモート化や新しいビジネスモデルへの挑戦の他、消費者ニーズの多様化といった市場変化を背景に、複雑な課題を解決するための力が求められている。当社の一番の売りである、顧客のビジネス効率化を考え抜いた製品、ソリューションはこうしたシーンにも対応できる。他業界での実績を参考に、製造業でも評価してもらえるようまい進していきたい。

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