慶應義塾大学SFC研究所は、同大学 看護医療学部 准教授の宮川祥子氏が推進するプロジェクトが、3Dプリンタ製筋肉注射練習モデルの設計データおよび作成/使用方法に関する説明書を特設Webサイトに公開したことを発表した。ワクチン接種の打ち手不足解消に向け潜在看護師の実技練習環境の整備を支援する。
慶應義塾大学SFC研究所は2021年7月12日、同大学 看護医療学部 准教授の宮川祥子氏が推進するプロジェクトが、3Dプリンタ製筋肉注射練習モデルの設計データおよび作成/使用方法に関する説明書を特設Webサイトに公開したことを発表した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止の切り札として、日本国内でもワクチン接種が始まっているが、現在ワクチンの供給と併せて課題となっているのが打ち手の確保だ。その解決策として、日本全国に70万人いるといわれている潜在看護師の活用が期待されているが、その力を最大限に発揮するために、筋肉注射の手技を再確認できる実技練習環境の整備が求められている。
今回の取り組みでは、公開された設計データを基に、3Dプリンタを活用して筋肉注射練習モデルを製造することで、必要とされる実技練習環境を整備し、潜在看護師が感じている長期間のブランクによる不安の解消を助け、積極的なワクチン接種業務への参加を支援する。
具体的には、3Dプリンタで造形したパーツ(骨パーツ)および3Dプリンタで作られた型を用いて製作したシリコーン製パーツ(三角筋パーツ)、市販の吸水シートを組み合わせることで、筋肉注射を行う上腕部を再現する。製造に用いる3Dプリンタとフィラメントは一般的に販売されている機種(110×60×170mmサイズの造形が可能なもの)で問題ないという。また、3Dプリンタで製作した型に流し込むシリコーンゲルはSmooth-On製の「Ecoflex 00-30」を推奨。型の固定用にマスキングテープ、養生テープも必要となる。
以上のプロセスで製作された筋肉注射練習モデルは、肩峰に触れて注射する部位を確認できる他、実際に針を刺して液を注入することも可能だという。特設Webサイトで公開されている設計データは無償で使用でき、改変も可能である。また、設計データの他、詳しい作成方法や使用方法が記されたマニュアルも併せて公開されている。
なお、今回のプロジェクトは、科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の支援により行われている「感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」(COI ファブ地球社会創造拠点)の研究の一部として実施されたものである。
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