コーナ氏は、Kriaを用いることで、組み込み型GPUと比べてビジョンAIの性能を大幅に向上できると訴えた。代表的な組み込み型GPUでも用いられている、ナンバープレート認識のビジョンAIで比較すると、半分の消費電力で1.5倍の性能を実現できている。
Kria K26の単価は、動作温度0〜85℃で2年保証のCグレードが250米ドル(約2万7100円)、動作温度−40〜100℃で3年保証のIグレードが350米ドル(約3万7900円)。この単価を基に、先述のナンバープレート認識のビジョンAIにおけるビデオストリーム当たりのコストを組み込み型GPUと比較すると、Cグレードは45%減、Iグレードは67%減になる。
ビジョンAIスターターキットであるKria KV260は、これらKria K26よりも安価な199米ドルという戦略的な価格に設定された。組み込み型GPUに対抗して、Kriaを用いたビジョンAI機器の開発を促進し、ひいてはプログラマブルSoCのAI用途での普及を進めたいという意図が強く表れている。
ただし、ザイリンクスのプログラマブルSoCを搭載するSOMは、同社の販売パートナーも多数リリースしておりカニバリゼーションが危惧される。この点については「ザイリンクス自身がSOM製品を投入することで、SOMという広い市場の中でプログラマブルSoCを搭載するSOMへの注目を高めるスポットライト的な効果があるだろう。パートナー企業のビジネスを圧迫することはない」(コーナ氏)としている。
今後Kriaは、Kria K26の他に、コスト重視アプリケーション向けや、より高いAI演算性能が求められるアプリケーション向けなどにラインアップを広げる方針である。ただしこれらのラインアップの投入時期は2022年以降になる見通しだ。
会見では、Kria KV260の使い勝手の良さについて、東京工業大学発のAIベンチャーであるTokyo Artisan Intelligence(TAI)のCEOで、同大 工学院 准教授を務める中原啓貴氏が説明した。
TAIでは、GUIベースのAI設計ツール「TAI Compiler」を展開しており、AIのプログラムコードの実装にザイリンクスのFPGAボードを活用するなどしてきた。中原氏は「Kria KV260は、開封後わずか1時間でAI機能を含めた実機のデモ動作が可能になる。そして、Kria KV260とTAI CompilerによるPoC(概念実証)デザインは数日で完了できた。また、組み込み型GPUボードの場合はインタフェースの関連でどうしても一定の遅延が発生するが、インタフェースにFPGA回路を利用できるKria KV260は遅延を大幅に抑えられる。消費電力も小さい」と述べている。
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